道玄斎さんのコラム 11:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第十一回「クトゥルフ神話とノベルゲーム」

めでたく、私のこのコラムも十回という節目をむかえ、今回、つまり第十一回目からは新しいフェーズに移行しようかな? と思っています。
どうぞ、これからも、もう少しだけお付き合い下されば幸いです。




■ホラーの形

私には、たくさんのノベルゲーム仲間がいるんだ。
実際に、ゲームをバリバリ作っている現役のゲーム制作者もいれば、プレイ専門の人、あるいは、何度も「自作」しようとしては挫折している人、ほんとうに色々な立場の仲間がいるんだけど、その中で、「ホラー系作品が好き」なB君が、急に、こんなことを言い出したんだよ。


「最近のホラーは脱出ものばっかりだよ! なんか今までにないホラーってないかな?」

「ノベルゲームだと、脱出ホラーは少なめなんじゃない?」

「あっ、道玄斎さん、いたんですか。まぁ、そうなんですけどもね。けど、なんか脱出ゲームブームに乗っかったノベルゲームとか、よく目につく気がするんですよねぇ」

「いや、それはしょうがないよ。ブームに乗っかるっていうのも『自分の作品をプレイしてもらう』ためには必要なことだもの」

「それにしても、ホラーのバリエーションって意外と少ないですよね。心霊でしょ、今言った脱出系でしょ、あとは心理サスペンスみたいな感じのやつ……と、だいたい3つくらいかなぁ」


確かに、ホラーって意外とレンジは狭いのかもしれないね。
けど、いわゆる「学校の怪談」をテーマにしたノベルゲームはすごい人気だし、コンスタントに作られ続けているんだ。

つまり、「その3つくらいで十分」ってことなんじゃないかな?
私も、ホラーは大好きで、テレビで心霊特集とかやってると、つい見ちゃうんだけど、内容はお察しの通りで、いつもいつも似たような内容の焼き直しなんだ。
それでも、なんか怖い話っていうのは、人をひきつける何かがあるんだよねぇ……。


「それはわかりますよ。けど、ホラーだってこの平成の世に、アップデートされてもよさそうなものじゃないですか。まったく日本のホラー界はなにをやってるんだろう!」

「(ホラー界……?)まぁ、それはともかく、実は地道に作品が積み重ねられているんだけど、まだそこまで認知度が高くないホラーはあるよ」

「え! なんです?」

「聞いたことくらいはあるでしょ? 『クトゥルフ神話』ってやつなんだけどもね」


そうなんだ。近年、この「クトゥルフ神話」を題材にしたノベルゲームは少しづつ、けど確実に作られてきているんだよ。
有名どころではニトロプラスの『沙耶の唄』、あるいはライアーソフトの各作品にも、このクトゥルフを題材にしたものが多いね。フリーのノベルゲームでも、作り手がちらほら出てきたってところかな。


「あぁ! なんかタコみたいな化け物が出てくるんでしょ?」

「クトゥルフに出てくるのは化け物……でも間違いはないんだけど、もっと端的に言うと『邪神』なんだよ」

「え!? 邪神?」

「いや、もっと正確に言えば『邪悪なのか、善良なのかすらわからないような全く異質の存在』かな」

「えー、なんだか曖昧だなぁ……それ、怖いんです?」


どうも、B君には想像力が欠けているみたいだなぁ。
「悪なのか善なのか、それすらわからない強大な存在」って、ものすごく不気味だと思うんだけど……。


「最近は、『ニャル子さん』のアニメ化なんかで、ポップなイメージも出てきたりしてるんだけど、本質的には本当に怖いよ」

「ソースは?」


これはB君の悪いクセで、なにかってーと「ソースは?」って言い出すんだ。
それに、今の会話の流れだと「ソースは?」って返答はおかしいじゃないか。それに、怖さって誰かに教えてもらうようなもんじゃないだろうよ。


「まず、一連のクトゥルフ作品が『コズミックホラー』というジャンルでくくられているんだけど、これって、日本語にすると宇宙的な怖さ、っていうかそういう感じだよね」

「宇宙? ホラーと関係あるんです?」

「まさにそこが、クトゥルフ的な怖さの源だよ。人間とは思考も、姿形、存在の大きさも全く異なる存在がいて、そいつらの前では、人間なんてゴミみたいなもんなんだよ」

「なんか怖くなってきた……」

「普通の化け物系の話だとさ、人間が頑張って、その化け物を倒したりするじゃない?セーラー服を着た日本人形のような女の子が日本刀で退治したりさ」

「ああ、それは定番ですね。でもって、セーラー服の子は黒タイツ穿いてるんですよね!」

「黒タイツって最高だよな……っと……それはともかく、クトゥルフに出てくる邪神たちは、もう人間じゃ絶対に倒せないんだ。相手になるとかそういうレベルじゃないんだよね」

「え!? じゃあ、ストーリーはどうなるんです?」

「たいていの場合は、邪神と対峙すら出来ないんだよ。邪神の秘密に近づくだけで発狂したり、死亡したり。あるいは、その邪神をあがめる教団に命を狙われるも、辛くも逃れる、とかが典型的なパターンかな」

「それでおしまい?」

「うん、おしまい」

「うーむ……みんなバッドエンドなのか……」

「けど、邪神のしもべの更にその孫しもべくらいなら、ギリギリ倒せないこともない……かもしれない……みたいな作風もあるよ」

「にしても、救いがないなぁ!」


クトゥルフっていうのは、そういう「ある人間が、邪神の存在により破滅するその道のりそのものを味わうホラー」だ、って言ってもいいんじゃないかな。
なにしろ、昔TRPG界隈では、「廃人製造ゲーム」なんて呼ばれてたもんだよ。




■ファンタジー・SF・ホラー

「ん? TRPG? それってファンタジーですよね?」

「え? いや、クトゥルフだからホラーだよ?」

「ええ? TRPGってファンタジーじゃないんですか?」


うわー、今の若い人はそういう認識なのか。
TRPGってのはゲームのジャンルの一つであって、それこそ「ノベルゲーム」みたいなくくりでしかないんだよ。ノベルゲームでも「恋愛もの」「冒険もの」「ホラー」……と、色んなジャンルがあるよね。それと全く同じなんだ。
クトゥルフに関しても、私なんかはまさにTRPGの『クトゥルフの呼び声』で知ったんだよ(最近、リバイバルされてるみたいだね)。

けど、B君の誤解(?)も、まったく理解出来ないわけじゃないんだ。
というのも、「ファンタジー、SF、ホラー」なんていうのは、ひとかたまりのジャンルとして認識されていた時代があるんだよ。

だから、SFの人がファンタジーに接近することもあったし、ファンタジーの人がホラーに接近する、ということもあったというわけ。例えば、SFの翻訳で有名な安田均先生は、ファンタジーTRPGの大御所「グループSNE」を立ち上げたし、山本弘先生だって、ファンタジーTPRGのゲームマスターをやったりしていたんだ。

また、グループSNEの作家、友野詳なんかは、代表作のファンタジー作品『ルナルサーガ』で、明らかにクトゥルフを意識した「銀の月の神々」を登場させてるね。ちなみに、『ルナルサーガ』も最近、復刻されているようだから、興味があればぜひぜひ。


「ふーん……そうなのか。じゃあ、さっきの話のクトゥルフを取り込んだノベルゲームもそういう人達が作ったのかな?」

「今日はなんか鋭いな。 実はそうなんじゃないかな、って俺は思ってるんだよ」

「というと?」

「さっき、ライアーソフトの名前を出したよね? ライアーソフトってもともと、TRPG界隈で活躍していた『遊演体』という団体が、その母体なんだ」

「となると……『クトゥルフの呼び声』は当然知ってるなぁ」

「本当のところはわからないけど、その可能性は高いんじゃないかな」




■そして広がるシェアードワールド

「ま、大体、クトゥルフの話と、関連する話は終わったかな」

「あれ? ちょっとまてよ……。さっき『一連のクトゥルフ作品』とか『作風』とか言ってましたよね? あれはどういう意味です?」

「ああ、クトゥルフっていうのは、アメリカの作家、ラヴクラフトさんが生み出したものっていうのは間違いがないんだ。けど、そのコズミックホラーというアイデアや世界観が魅力的だったから、その後、多くの作家がその世界観を使って作品を書いたんだよ。それを神話として体系づけたものを『クトゥルフ神話』と呼んでいるんだ」

「あれ? それって二次創作?」

「近い部分はあるんだけど、ちょっと違うんだな。むしろ重点は『世界観を共有する』ってところにあるんだ。そうやって多くの人が共有出来る設定を『シェアードワールド』って呼ぶみたいだね」

「あっ、そのシェアードワールドって『神曲奏界ポリフォニカ』にもあったなぁ」


最近では、このシェアードワールドって考え方も一般的になってきているんだ。
シェアードワールドが生まれるためには、もともとの作者が、著作権などの権利を主張せず、「自由に共有出来る世界」を解放しなければいけないんだけどもね。

実はすこし前、私もノベルゲーム界隈で、シェアードワールドを解放している作者さんを見かけたんだ。地名などの設定が書いてあって、「この設定は、シェアードワールドとして自由に利用してもよいが、利用した際には作品のクレジットに当サークルの名前を入れること」なんてことが書いてあったんだけど、私は考え込んでしまったんだ。


「え? なんでです?」

「うん……その設定っていうのがさ、例えば、

  ・○○市??人口20万人ほどの地方都市。風光明媚な自然が残り、それ目当ての観光客もいる。

ってな具合だったんだよ」

「普通の設定じゃないですか。なにか問題でも?」

「わからないかなぁ。その○○市を△△市に変えちゃえば、許可をとらなくても使えるじゃないか」

「あー、なんか汚ねぇー!」

「いやいや、これは結構デカい問題だよ。だってそんな地方都市ってありふれてるじゃないか。だから、わざわざ許可をとらなくても、その架空の都市名を別の都市名にしちゃえば、なんの問題もないよ」


つまり、私がなにを言いたいのかっていうと、「シェアされる世界には魅力がないといけない」ってことなんだよ。「シェアしていいよ!」って言われても、そこに魅力がなければシェアはされないだろうし、今の話のように、「日本のあちこちにある都市」だったら、わざわざシェアする必要もないんだよね。


「たしかに……」

「だろ? そもそもクトゥルフだって、コズミックホラーというアイデアが抜群によかったから支持を拡げていったんだから」




■クトゥルフの追っかけは大変だ

「なんか、クトゥルフ神話にも興味が出てきたなぁ」

「うん、フリーのノベルゲームでも 『Mたちの調律』 は、クトゥルフを題材の1つにしているらしいから、そういうところから手をつけてみたらどうかな?」

「そうします! けど、ラヴクラフトでしたっけ? その人の原作も読んでみたいなぁ」

「かなり不気味な傑作が多いよ。日本ではどちらかと言えば、クトゥルフは『フレーバー』としての使われかただったり、さっきの『ニャル子さん』みたいにポップなほうに流れがちなんだけどもね。創元推理文庫から出てる『ラヴクラフト全集』が一番入手しやすいかな?」

「よし、じゃあ、今から本屋行ってきます! それじゃまた!」


あっ、行っちゃったよ……。
『ラヴクラフト全集』って、全7巻+別巻上下二冊だから、合計で9冊もあるんだよね……。それに、他の作家の書いたクトゥルフの傑作も多くて、全てを網羅して追いかけるってことは相当むずかしいはずだよ。

あーあ、なんか話をしてたら眠くなってきたな……。
さっき太平洋で地震がおきたらしいけど、まぁ、私には関係ないか。
それじゃ、おやすみ。いい夢が見られるといいな。

(つづく)

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