道玄斎さんのコラム 31:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第三十一回「ノベルゲームの選択肢を考える」

 最近、人から「やってみて!」とおすすめされてしまったので、いわゆるソーシャルゲームをちょこちょこっとやっているんだ。

 一回一回のミッションが短く、それぞれ完結しているものだから、空いた時間で気軽に遊べるのがいいね。もっとも、私は無課金のライトユーザーだから、そんなにゲームに入れ込んでいる、ってわけじゃないんだけどもね。

 私がやっているソーシャルゲームは、恋愛シミュレーションに近いもので、一本道のメインストーリーを進めながら、いろいろな女の子と仲良くなっていくことが出来る。
 まぁ、そういうサブヒロインを全員落とすためには、かなりの根気か課金が必要になっちゃうんだ。

 それはさておき、恋愛シミュレーションといっても、ノベルゲームに近い……というかそのもののパートがあって、選択肢を選ぶことで、サブヒロインのルートに入っていけるんだけど……その選択肢で、ちょっと私は疑問を感じてしまったんだよ。




■選択肢をめぐる問題

「疑問ですか? 何があったんです?」


 と、のんきに声をかけてきたのはS君。
 彼もまた、ノベルゲームの制作者なんだけど、彼の作品は基本一本道で選択肢による分岐がないんだ。「俺はこのストーリーを描きたいし、見せたい!」というようなタイプだね。


「実はね、三択の選択肢があるんだけど、それが異常なほどむずかしいんだよ」

「えー! 道玄斎さんも情けないなぁ。何年ノベルゲームをやってるんですか!」

「そりゃ、大抵のノベルゲームなら選択肢はある程度うまく選べるよ。けど、これはそういうタイプとはまたちょっと違うんだよ」

「? というと……?」

「簡単に言うと、正解の手がかりが全くないんだ」


 わかるかな?
 例えば、女の子と初めて出会って、何かちょっとした事件がおこる。
 主人公(≒プレイヤー)は、その女の子のことを全く知らない。何しろ、今はじめて会ったばかりだからね。

 そこで選択肢が出てきちゃうんだよ。
 そうだなぁ、その女の子がちょっと元気がない様子だった、としようか。
 そこで出てくる選択肢は、


 ・優しく声をかける

 ・優しく見守る

 ・優しく頭をなでる


 と、まぁ、こんな感じなんだよね。
 初対面で、どんな性格の子なのかわからないのに、この選択肢の中から正解を選べるかい?


「うーん! 確かにこれはむずかしい!」

「だろ? こういう時の常套手段として、“女の子のビジュアルをヒントにする”というものもあるんだけど、それも必ずしもうまくいくわけじゃないんだ」

「女の子のビジュアルですか? おとなしい感じの子だったら、こっちも静かに対応する、とかかな?」

「そうそう。けど、例えば、男勝りなタイプの女の子に、頭をなでたりしたら、意外とデレてきたり、ってこともあるじゃないか」

「なるほど……これは難問ですね……」


 だよね?
 どんなゲームでも最初のほうの選択肢は手探りになってしまう傾向はあるよ。
 けど、少しづつ読み進めていくうちに、その女の子がどういう子なのか、どういう問題を抱えているのかがわかってくる。すると、選択肢選びは楽になるもんなんだよ。

 ところが、今回のソーシャルゲームは、最初っから最後までこういう選択肢の出しかたなんだ。後半に至っても、女の子の性格や状況とはあまり関係がない形での選択肢が提示されてしまう。

 今の例だと、徐々に女の子と親しくなっていって、その子が「頭をなでられるのが好き」だとわかれば、そういうスキンシップをとる方向で選択肢を選べばいいな、とわかるんだけども、実際に出てくるのは、


 ・右に行く

 ・左に行く

 ・まっすぐ進む


 というような、その女の子をめぐる物語とは、きわめて関係性が薄い選択肢なんだよねぇ。これじゃ、誰だって不正解を連発しちゃうよ。




■こんな選択肢もあるぞ

 ところで、ノベルゲームには「その子のルートを回避するための選択肢」っていうのもあるんだ。

 またしても、さっきの例だけど、


 ・優しく声をかける

 ・優しく見守る

 ・見なかったことにして通り過ぎる


 こんな感じで選択肢が出てきたら、一番下のそれは、明らかにその子のルートに入らないための選択肢ってことだよ。
 こういう選択肢が出てくるときは、「この子のルートに入ったら、あの子のルートに入れない」というようなタイプの作品であることが多いよ。


 また、選択肢があっても、ルート感覚が希薄な作品っていうのもあるんだよね。
 これは大きく、「物語の多様性そのものが作品になっているタイプ」と「最後にそれぞれのルートが結びつき、全体像が見えるタイプ」にわけることが出来そうだよ。

 そうした作品には「正解」のルートなんてのは想定されていないんだ。
 到達したエンドが、それぞれ独立性を持っていて、強いて言うなら「どのルートも正解」ってことかな。

 そういえば、フリーのノベルゲームでも『cubic3』という作品があったなぁ。
 これは、ストーリーごとに「僕」や「君」の示す内容が変わっていく面白さや、すべてのルートを読み終えたとき、エンディングリストによって、クッキリと物語の全体像が見える作りが魅力だったね。




■選択肢と想像力

「とにかく、さっきの話に戻りますけど、攻略対象の女の子のパーソナリティが、選択肢に反映されていなかった、ってことですね」

「物語の文脈と切り離された形での選択肢ってことだね」

「たしかに、そうなると“物語感”は弱くなりますよねぇ。ん? まてよ……これはソシャゲですからあえてそうやって難しくして、課金をうながしているんじゃないんですか?」

「あっ、そうか! そう簡単に攻略されちゃ困るわけか……。こりゃソシャゲっていうのも、なかなかどうしてしたたかだなぁ!」


 というわけで、ソーシャルゲームのノベルゲームパートでの選択肢選びのむずかしさは、それが「ソーシャルゲームである」ってところに起因しているようなんだ。

 簡単にサブヒロインのルートを攻略出来て、目的である(?)女の子とのエッチシーンまで簡単にいけちゃったら、そりゃ会社はもうからないよね。
 商業ノベルゲーム作品なら、そもそもプレイするために8,800円とか出さないといけないわけだから、基本プレイが無料のソシャゲとは状況が違うんだ。そこまで考えて、ああいう選択肢にしているのか、はわからないけどもね。


 そうは言っても、私はその「選択肢の問題」に1つのノベルゲームの特徴ともいうべきものを感じるんだよね。

 普段は不毛だって言っている「ノベルゲームのゲーム性」に関わる問題なんだけど、選択肢を選ぶときって、さっき話したとおりで、「物語の文脈」を考えながら選ぶよね?

 ヒロインの性格、物語の状況、主人公の性格……文字にすると大げさだけど、こういうものを考えながら、普段選択肢を選んでいるはずだよ。
 つまり、「想像力」というのが、ノベルゲームの選択肢選びでは重要だってことなんだ。


 ヒロインや状況、主人公の気持ちや性格なんかを想像しながら、選択肢を選び、物語を紡いでいく。そう考えると、これもまたゲーム的と言えるんじゃないかな?

 三人称で語られる物語であっても、基本は一緒だよ。
 ただ、三人称であるってことは、プレイヤーにはキャラクターが知らない事実を知っていたり、物語の背後の状況が見えたりしていることが多いから、まさに物語を「導く」感触は強くなるよね。


 だから、ノベルゲームのゲーム性とは? と聞かれたとき、それが選択肢アリの作品であれば、「想像力を使う知的な遊びの要素がある」と答えるよ。

 もちろん、今話したことは基本だから、それに当てはまらないようなものだって、きっとある。
 それに、ノベルゲームではバッドエンドに行ってしまったとしても、セーブさえきちんとしておけば、そのポイントからやり直しがきくから、そういう部分ではたしかにゲーム性は低いよね。


 まぁ、そもそもノベルゲームは「ノベル」が基本なんだから、一本道の作品でも、小説を読むときのように、想像力を使っていることは間違いないんだ。
 綺麗な立ち絵やスチル、サウンドやムービーも、実はその想像力の補助でしかないんだよ。昨今では、そうした補助の部分がものすごく進歩してしまって、そっちの出来栄えで作品を判断するようなことっていうのも増えてきたんだけど、それはちょっとね……。

 そういう想像力がいかに大事かってのは、名作と呼ばれているものを、ノベルゲームに限らず考えてみるといいんじゃないかな?

 名作と呼ばれているものの多くが、「解釈」を要求するものじゃないかい? あるシーン、あるセリフ、そして物語世界の全体像、そうしたものに個々の想像力による解釈が可能な作品だよ。
 思い当たる作品、あるんじゃない?
 例えば、『AIR』なんかもそうだろうし、マンガだと『風の谷のナウシカ』もそうだよね。

 つまり、これは作品自体の懐が深くて、表面だけ見ても全然楽しめるけれども、実は深い世界があるってことなんだ。そして、想像力を使えばそれをたっぷり楽しめるってわけ。


「なんだかえらく真面目な方向に話が進みましたね……」

「んー……別に意識してもっていったわけじゃないんだけどね。やっぱり、問題っていうのは単独で存在しているように見えて、けっこうつながっているもんなんだよ」

「それにしても、道玄斎さんがソシャゲですか……。前は嫌いって言ってたのに」

「ま、まぁね……」

「それに最初、『一本道のメインストーリーがある』って言ってましたよね? もう難しい選択肢にはこだわらずに、そのメインストーリーを楽しんだほうがいいんじゃ?」

「そ、それはだめだ……!」

「へ? なんでです? やっぱりサブヒロインのルートを含めてコンプリートしたい、というノベルゲームマニアとしてのこだわりですか?」

「いや、だって……それじゃサブヒロインの女の子のエッチシーンが見られないじゃないか!」

「…………」

(つづく)




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