道玄斎さんのコラム 22:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第二十ニ回「スクリプターとは何する人ぞ?」

 ゲーム作り、っていうと、やっぱり「ライター」「絵師」(含グラフィッカー)、あるいは「音屋」(サウンド担当)が主要な職掌なんだ。これはそのまま以前書いた「ノベルゲームの3要素」に対応しているから、わかりやすいよね。

 けど……少し大きな規模での作品なんかの場合、「ディレクター」という作業の統括をする人も必要になる。「ディレクター」という肩書きだけ持っていて、実作業に携わらない、という人はまれで、「ライター兼ディレクター」のような形になるのが同人ゲーム制作では普通かな。

 こうやって、ノベルゲームの3要素に対応する職掌だけでなく、実際には色々な役割があるんだけど、「スクリプター」という役割もあるんだ。
 今日は、そのスクリプターのお話だよ。




■スクリプターの善し悪しがサークル存続を決める?

 スクリプターっていうのは、読んで字の如しってやつで、「スクリプト」を担当する役割のことだよ。実際は、スクリプターって役職を立てずに、ライターが兼任することも多いんだけどもね。

 シナリオを書いたファイルに対して、タグのような形でスクリプトを記述していくことをスクリプト作業なんて呼んだりする。
 本格的なプログラミングとはちょいと違うんだけど、これがまた大事な作業なんだよ。

 みんながふつうにゲームをプレイするとき、BGMが流れるよね。
 こういう「ここで○○のBGMを鳴らす」という命令もスクリプトで書くんだ。


  bgm "bgm/piano1.ogg"


 NScripterだと、こんな感じかな。
 これは「bgm」のフォルダのなかに入っている「piano1.ogg」というファイルを再生しろ、という命令なんだ。

 実際に、そうやってBGMを鳴らしてみたら、他のBGMよりなんだか音量が大きいぞ。
 このままじゃ、このBGMだけ浮いてしまう……。
 そんなときには、


  bgm "bgm/piano1.ogg"
  bgmvol 70


 なんて感じで、音量もスクリプトで指定してやるんだ。

 いや、そもそも「一行を何字書きにする」とか、「画面のサイズは800×600で」なんていうのも、みんなスクリプトで指定しておくんだよ。
 どうだい? スクリプトが大事だってわかったでしょ? で、それを実際に記述してくれるのがスクリプターなんだ。こりゃ、かなり重要な役どころだよ。

 つまり、ちょいと大げさだけど、スクリプトを自由自在に操れるようになれば、「作品を思い通りに出来る」んだ。


 ここで思い出してほしいんだけれども、非常に活発に作品をリリースしているサークルってあるよね? 二月に一本とか、あるいはもっと早いペースの人もいるよ。
 そういうサークルって、優秀なスクリプターがいることが多いんだよ。

 もちろん、物語作りのアイデアっていうのもあるんだけど、それと同じくらい「これを試してみたい!」と思ったら、即スクリプトを組んで実現出来る能力、それがあるから、高頻度で作品を形に出来るってわけ。

 よくゲーム制作にまつわる話で、「どうやってモチベーションを保つか?」っていうものがあるんだけど、ゲーム制作の場合は、「自分(たち)の作業が形になる」っていうが、ものすごく大事なんだ。

 ライターが書いたテキスト、音屋が作ったBGM、絵師が描いたイラストを組み合わせて、「完成形」(もちろん、仮のものだけど)を示す。そうすると、それまでの作業が「むくわれた」感があるし、気持ちを新たにして、残りの作業に取りかかることが出来るんだ。

 こういう、「作業の統合」もスクリプターの仕事なんだよ。
 スクリプター専任じゃなくても、高度なスクリプト技術をもったメンバーがいれば、作品が完成しやすくなるし、アイデアの試行錯誤もスムーズにいく。結果、長くサークル活動を続けていくことだって出来る。

 意外と日の目を見ないスクリプターなんだけど、こうやってみていくと、とっても大事な役割だってのがわかるよね。




■例によって問題が……。

 とにかく、スクリプトの扱い次第で、ゲームの演出面は大きく変化するんだ。
 ただ、スクリプトというのも意外とやっかいでねぇ……。私なんかはものすごく苦手なんだ。だから、自作品を作るときには、得意な人からスクリプトを見せてもらって、それを参考に(パクッたとも)したりしたよ。

 本当は専任のスクリプターがいると、とってもスムーズなんだけど、スクリプターもときには、問題を引きおこすこともあるんだよ。


 あるサークルがゲームを作っていたんだけど、メンバーにはスクリプト専任の、いわゆるスクリプターがいた。
 いや、正確にいうと、そのメンバーはスクリプターでもあるんだけど、その作品のために「ゲームエンジンそのもの」まで作ってしまったプログラマーでもあるんだよ。

 私たちは、「ゲームエンジンを作る」なんて聞くとビビってしまうんだけど、ある程度のプログラミングスキルがあれば、想像しているよりも簡単にゲームエンジンは作れてしまうらしいね。
 そうはいっても、スクリプトすら難儀している私では、それはもう雲の上の世界の話だよ……。

 ともあれ制作は、各メンバーをとりまとめるディレクター(兼ライター)のもと、けっこう順調に進んでいたんだ。
 制作も佳境に入ってきて、スクリプターは八面六臂の大活躍。みんなが作った素材をまとめて、ついにベータ版まで完成させた……と、そこまではよかったんだよ。

 ノベルゲームの場合、「インストール」を要求するタイプの作品ってあるよね。商業作品の場合、ほとんどがインストーラーが起動して、ゲームをインストールするんだけど、実のところ、インストールにはあまり意味はないんだ。
 ただ、フォルダ内のごちゃごちゃしたものを見せないで済むとか(Program File内にはしっかり表示されているんだけど)、せいぜいその程度かな。

 けど、インストーラーがついてインストールするような形式だと、なんていうか「商品」っぽさは出るんだよね。だから、そこに意味はなくてもインストーラーを用意して、ゲームをインストールさせるようにする人っていうのも、けっこういるんだ。

 今回のケースでも、メンバーの意見によって、スクリプターはちゃんとインストーラーを用意したんだ。でも、そこに不具合があったっぽいんだよ……。
 なんとびっくり、そのインストーラーでゲームをインストールしたのち、ある手順をふむと、ハードディスクのデータを消してしまうという、とんでもないバグがあったんだ!

 せっかくのベータ版が、そのバグによってオシャカになってしまった。
 かといって、他のメンバーに黙っているわけにもいかない。意を決してスクリプターはメンバーに連絡をとって、ディレクターのアパートに集まってもらい、今回の申し開きをすることにしたんだ。


「今回はすまなかった! インストーラーにバグがあったんだよ。だからリリース予定は大きく遅れると思う……」

「バグ? どんなバグなんだよ?」

「それが、インストール後に、ある手順をするとハードディスクが消えちゃうんだ……。だから、組み上がってたベータ版、全部消えちゃったんだよ……」

「マジかよ! そりゃないぜ!」

「いくらなんでも、そのバグは悪質すぎだろ!」

「責任とれよ!」


 予想してたことだったけど、スクリプターへの風当たりは強かった。
 いくらバグが出ちゃったとはいえ、それまで一生懸命に仕事してくれたんだから、あんまり責めるのもかわいそうだよね。
 おっと、「データをクラウド上にバックアップしておかないのが悪い!」なんていわないでよ。当時はそんなサービスはなかったんだから。

 みんながスクリプターを責め立てたんだけど、ディレクターだけは違った。さすがにディレクターをやっているだけあるね。


「まぁ、まてよ。こいつだって悪気があったわけじゃないだろ? それに今まで頑張って作業してくれてたじゃんか。バグが発生したのはしょうがないし、デバッグ期間もそれを見越して取ってあるんだから、この事態を前向きに考えようぜ!」

「前向きってなんだよ? 具体的にいってくれよ!」


 と、「感覚を大切に!」がモットーだったメンバーが突っかかった。
 こうやって、不測の事態でケンカ別れしてしまうサークルや企画っていうのも、本当に多いんだ。でも、そういうときに、まとめ役がシッカリしてると、企画を立て直せることだって多い。今回はディレクター氏がそうとう頑張ってるよ。


「そうだな……まず、今回のバグの原因をはっきりさせよう。そして再発の防止を徹底させる。その後、手の空いてるメンバーで、彼を助けながらベータ版の状態まで、なんとか復元しよう!」


 一度下がってしまったモチベーションはなかなか元には戻らないけれども、ここまできたらやるしかない。
 なにより、ディレクターは「前向き」だった。なんとかもう一度、ベータ版を作り、その勢いで作品を完成させよう。みんなの心にかすかな光がさしてきた。


「じゃあ確認だ。今回のバグは原因は特定できてるのか?」

「うん、なにが悪かったのかちゃんとわかってる」

「再発防止のために、どこが悪かったのか、どうやって対応すればいいのかを説明してくれよ」


 そういって、ディレクターは自分のノートパソコンの前に、スクリプターを座らせた。
 メンバーたちは、彼の背中越しにディスプレイを見つめている。


「えっと、今回のバグはインストーラーに問題があったんだ。インストーラーを使ってゲームをインストール出来るようにしただろ?」

「そうだったな。で、どういう条件でそのバグが発生するんだ? そこが問題だぞ」

「うん、こうやってゲームをインストールするだろ? それから……」


 なんて調子で、彼はディレクターのノートパソコンでバグが発生した状況を忠実に再現し始めたんだ。
 そう……忠実に、だよ……?


「……で、こうやると、ほら、ハードディスクが消えちゃうんだ……って、あっ! しまったぁぁぁああ!!!」

「おい! なに俺のパソコンぶっ壊してんだ!!!」


 これには、さすがのディレクターも怒り心頭!
 怒りとショックで、顔が真っ赤になったり、真っ青になったりしてたね。

 結局、ディレクターは自分の書いたシナリオをフロッピーに保存しておいたから、そこまで被害はひどくなかったんだけど、パソコンが初期化されちゃったもんだから、完全に意気消沈しちゃったんだ。

 こっぴどくみんなから責められたスクリプターは、その後、かなり肩身のせまい思いをしたらしいよ。この事件がトラウマになって、彼は「ノベルゲームにインストーラーなんていらない!」と強く主張するようになったらしいんだけどもね。


 おっと、今回は「スクリプトがらみのお話」のつもりが、「スクリプターがやらかしたお話」になっちゃったなぁ。
 次回は、今回のお話でも出てきた「ディレクター」に焦点を当てようと思っているんだ。
 「ディレクターがいかに重要か」とか「ディレクターの大変さや苦労」じゃなくて、またしても実話かどうか疑われそうな、ヘンテコなお話があるんだ。


 それじゃ、またね!

(つづく)

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