道玄斎さんのコラム 17:道玄斎のノベルゲーム漫遊記
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●第十七回「シナリオのひろがり」
やっぱり、シナリオ……とくに「物語内容」のほうが気になるんだ。
今回は、一般的な内容を俯瞰したり、あるいは女性向け作品特有の問題にも踏み込んでいこうかな。
■定番のシナリオのかたち
前回は、本当にざっくりと、シナリオについての話をしたんだけど、ノベルゲームのシナリオにかんして、「恋愛ものはさすがに飽きたなぁ」なんて声もあるんだ。
まずは、その「恋愛もの」から考えていこうか。
確かに、どのゲームを見ても、恋愛要素が多かれ少なかれ入ってるんだよね。いわゆる、「ハイスクール恋愛もの」もたくさん作られている。そういう意味で、「恋愛ものは飽きたなぁ」というのは理解できるよ。けど、別の見方をしてみると、私はやっぱり、恋愛ものの肩をもってしまうんだ。
だって、恋愛ものが作られつづけている、という背景には、「恋愛もののファン」とでもいうべき人たちがたくさんいる、ということでもあるよね。
さらに、日本……いや、世界中で1000年以上にわたって、恋愛が主題となる物語は作られつづけている。それは、人間がやっぱり恋愛に興味があるんだ、っていう一つの証拠じゃないかな。
そりゃ、誰だって素敵な異性と、ロマンチックな恋愛をしたい、って思うもの。
私が問題だな、と思うのは、あまりに紋切り型の作品が多い、って部分であって、さっきの「恋愛ものには飽きた」という発言も、その意味での発言なのかもしれないね。
「恋愛ですか……『年齢=彼女いない歴』の俺には、二次元の恋愛だけが恋愛と呼べるものですよ」
「おや、B君。君もわりと恋愛もの好きだったよね?」
「そうですね。僕は銀髪のミステリアス系の美少女が好きですけど」
「俺は、黒髪おかっぱ系か、尊大幼女系が好きだなぁ」
「聞いてませんよ! ところでさっきの『紋切り型』ってなんです?」
「ああ、だからさ、いわゆる『ハイスクール恋愛ノベル』みたいなやつだよ」
「よく目にするタイプですよねぇ」
うん、これは本当によく見かけるね。
大体、主人公の属性も「無気力」で、間違っても運動部には所属したりしていないんだ。
で、大抵の場合、クラスには無口だけどミステリアスな女の子、そして主人公の幼なじみがいて、物語を盛り上げるんだよ。みんなも何度もみたことあるよね?
「ツンデレがいたり、お姉さん系のキャラがいたりすることもありますよ!」
「まぁ、そういうのはヴァリアントってことで。で、こうした紋切り型の問題の一つは、『なんでいつもいつも高校なんだ?』ってとこにあるのは間違いないよ」
「あっ、本当だ……なんでだろう?」
「俺も気になって、身の回りの人に聞いてまわったことがあるんだよ」
私があつめた「何で高校なの?」という問いへの答えはこんな感じだったね。
・高校なら、おそらくほとんどの人が通った経験があるので、細かい描写を必要とせず、なおかつ、すぐに理解してもらいやすい。
・商業ゲームの主人公たちが、ほとんど高校生なので、それに追随している。
・クラスメイトということにすれば、タイプの違う美少女を登場させやすい。
「うーん、こうしてみてみると、舞台を高校にする、というのは理にかなってるなぁ」
「だよね。俺もそれから考えてみたんだけど、『学校という時間の流れによってリズムを生み出しやすい』というのもあるんじゃないかと思うんだ」
「どういうことです?」
「つまりね、一時間目、二時間目……と、授業の区切りがあるし、休み時間だってある。
だから、ダレてきたら休み時間にしちゃうとか、あるいは授業に場面を転換させちゃうとかが出来るんだ。さらに、体育祭、文化祭とかの大きな行事がシナリオ上のアクセントになってることも多いよ」
「なるほど」
「けど、逆にいえば、その学校の特徴や、学校時間とでもいうべきものに、シナリオが規定されちゃう、ということでもあるんだけどね」
「やっぱり、マンネリにおちいる要素はあるんですね……」
■シナリオのひろがり
だけど、恋愛ものであっても、舞台を「高校」から変えるだけで、印象は大きく変わるよ。たとえば、舞台を近未来にしてみれば、それだけで「SFもの」になるじゃないか。
どうも、私たちは作品の舞台と、その作品のジャンルを密接に考えてしまうようなんだ。高校が舞台で恋愛要素が強ければ、それは「恋愛もの」として認識されてしまうんだけれども、舞台が未来や、ファンタジー世界であれば、恋愛が主なテーマであっても、不思議なことに、それは「SFもの」や「ファンタジー」になってしまうんだよね。
お気づきのとおり、SFやファンタジーであっても、マンネリの要素は十分にあるんだ。SFといっても、毎度おなじみのループものであったり、あるいは「未来から記憶喪失の女の子がやってきた」というような作品ばっかりだと、やっぱりマンネリ感はあるんだよね。
ファンタジーでも同じだよ。主人公は放蕩下級貴族。今日も街をフラフラしていたら、事件に巻き込まれて……というパターン、きっと目にしたことあるはずだよ。
「と、まぁ、考えているストーリーの『舞台』をちょっと変えてやれば、意外とマンネリは防げるんだよ」
「たしかに、高校から大学に舞台を変えただけでも、印象違いますもんね」
「そうだね。あとはSFやファンタジーでも、もっとディープな世界を知ると色々なアイデアが出てくるんじゃないかな」
「といいますと?」
「たとえば、SFっていうと、さっきも話したループものとか、あるいは『かなり先の未来で、地球は荒廃している』なんて設定があるよね? 舞台は、かなり先の未来で、登場人物達は地球外に住んでいる……んだけど、結局そういうシナリオでは、別に地球上と変わることのない生活を送っているんだ。地球への憧憬を持ちながら、だけども」
「いわれてみれば……」
「けど、SFってそれだけじゃないよね? 深海にはクトゥルフ神話に通じるような、奇怪な生き物が住んでるんだよ」
「ダイオウグソクムシなんて、どっからどうみても邪神ですよね!」
「そういう深海を描くのだって立派なSFなんだよ。フリーのノベルゲームで『未来都市』っていうのがあるんだけど、これは深海の怖さを上手く描いた作品だったね」
「ほかにはどんなSFのネタがあるんですか?」
「そうだな、『科学ホラ話』とでもいうべきSFもあって、俺は物凄く好きなんだよ。アーサー・C・クラークの『白鹿亭奇譚』ってヤツなんだけどもね」
SFものを作りたい、っていうなら、有名なSF小説をおさえておくといいかもね。
アーサー・C・クラークは『2001年宇宙の旅』で有名な作家で、本当に膨大な量の作品を書いてるんだ。
アーサーのすごいところは、『白鹿亭奇譚』で「究極の消音装置」について書いたりしてたんだけど、なんと、2010年くらいだったかな、それと全く同じ原理の消音装置が本当に発明されてしまったんだ! ちゃんとした科学的な知識の裏づけがあって、しかもそれを軽妙に描いている。そういう凄さがあるよね。だから、むしろ、時代がアーサーの後追いをしてしまう、ってこともあるわけ。
「うーん、すごい作家だ……」
「だから、本当に探してみれば、どんなジャンルにも誰も踏み込んだことのない領域っていうのもあるはずなんだよ」
おっと、あわててつけ加えておくけど、私は「マンネリなシナリオがダメだ」っていってるわけじゃないんだよ。よく、フリーを含めた同人ゲームの文脈で、
“自由に好きなものを作れるのが同人ゲームの強み! だから、斬新なものを作らないといけない!”
という主張があるんだけど、私はそれは間違ってると思うんだ。
ちょっと脱線するけど、そもそも「自由」ってなんだろう? 漢文みたいな話になっちゃうけど、「自らに由(よ)る」ってことだよね。
なにがいいたいのか、っていうと、「自分がオーソドックスなものを作りたい」と思って、それを作るなら、それもまた「自由」なんだ、ってことだよ。
むしろ、「斬新なもので勝負すべき!」という他者の主張に由ってしまったら、それはもはや自由ではないんだ。
閑話休題。
とにかく、今の話は「それでも、なにか新味を出したいなぁ」と思ってる人にむけての話だと思ってよね。
■そして、乙女ゲーム
「舞台を変えて新味を出す」っていうのは、むしろ女性向けゲーム、つまり乙女ゲーの得意分野かもしれないね。
だって、「平凡な女の子」が主人公で、カッコいい男性キャラに囲まれて恋仲になる、という大筋自体は変わらないんだけど、舞台が幕末だったり、ファンタジー世界だったりと、意外なほどヴァリエーションに富んでるんだもの。
けど、乙女ゲーならではの世界観の扱いかた、となると、また一つ別の話題があるんだ。
「それは、もしかしてアレですか?」
「おっと、Pさん。きたのかい?」
「道玄斎さんが、乙女ゲーの話をする、って聞きましたからね。相手をしてやろうかと……」
「そいつぁ、どうも」
「で、乙女ゲーの世界観というと、『世界観がつながってる』というやつですよね?」
乙女ゲーに詳しい人には、今さらな話題ではあるんだけど、かなり特徴的な乙女ゲーの特徴に「世界観がつながっている」というものがあるんだ。
これはどういうことかというと、今きてくれたPさんが、『A』という乙女ゲーを作ったとしようか。その後、Pさんは『B』という乙女ゲー、『C』という乙女ゲーと、続々とリリースを続けるんだよ。
その時、たとえば『B』という作品のサブキャラとして、『A』の主人公が出てきたり、『A』のサブキャラが、『C』の主人公や、重要人物として登場したりするんだ。つまり、世界がつながっているんだよ。
「もちろん、男性の作ったゲームでもそういうのはありますけど、女性はこの世界観がつながっている、というのが大好きですから」
「みたいだね。その意味では、一人の作者さんが持っている『物語世界』それ自体は少ない、ってことになりそうだけどもね」
「どういうことです?」
「ほら、だってさ、世界観がつながってるわけでしょ? だからファンタジーの世界でいったん物語をはじめてしまったら、二作目、三作目もそのファンタジー世界を舞台にしないといけないじゃないか」
「そうともいえないですよ!」
「え? なんでだい?」
「ほら、そこは乙女ゲーの伝家の宝刀『異世界トリップ』がありますから!」
おっと、こりゃ一本とられたね。
たしかに、現代を舞台に物語をはじめても、途中でおなじみのキャラがいる世界に「異世界トリップ」させてしまえばいいんだもんね。
まぁ、こうした「世界観のつながり」あるいは「異世界トリップ」が苦手だ、という女性ゲーマーもいるのも事実なんだよね。けど、おおよその傾向として、そういうのがある、と知っておくのは無駄ではないよ。
とにもかくにも、究極的には、同人のゲームなんだから好きなように作ればいいんだ。
「売れ線」を目指して試行錯誤するのもよし、マンネリといわれようとも書きたい世界を書くのもよし、ということだよ。
恋愛ものが飽和している、という意見が今日の話の糸口だったわけだけど、恋愛という「描きたいもの」それ自体は保持しておいて、そのフレーム、つまり舞台を変えてやるだけでも、結構新しく見える、という話もしたよね。
もう少しくわしく書くと、「クラスのお嬢様と冴えない主人公の恋愛」を描くハイスクール恋愛ノベルがあったとしよう。これは非常にオーソドックスな形だよ。
けど、舞台を「戦国時代」にしてやれば、クラスのお嬢様は「お姫様」に、冴えない主人公は「足軽」とか、そういう役回りになっていくよね?
恋愛という基本路線そのものは変わらなくても、フレームを変えてやれば、そのフレームに規定されて、シナリオ世界にも変化や広がりが出てくるというわけ。
■CLAMPとスターシステム
「ちょっと、道玄斎さん! 話を戻して……。で、世界観がつながってるってやつですけど、誰が最初に考えたのかわかりませんか?」
「うーん、元祖を探すのは無駄な気がするなぁ……。古典文学でもそういう要素をもったものってあるしね」
「そっかー……」
「けど、CLAMPのマンガなんて、まさにそれだよね」
「あっ、たしかに! けど、たまに元ネタがわからなくなることもありますよ……」
「CLAMPマンガの特徴は、『同性愛を匂わせ、同人誌を作りやすくする』とかもあるんだけど、やっぱり、その世界観のつながりによる、スターシステムが目立つよね」
「道玄斎さんが好きなCLAMP作品って『カードキャプターさくら』でしたっけ?」
「うんにゃ、俺は『東京BABYLON』。後味の悪さは日本の漫画史に残るほどだけど、星史郎さんっていうのがめっちゃカッコいいんだ!」
「あっ、ほんとだ……メガネ系男子ですね……ジュルリ……」
「例によって、メガネを外すと超イケメンってやつなんだけどもね」
「にしても、この星史郎さんって、タバコ吸いまくってますね……。ヘビースモーカーの道玄斎さん並ですね……」
「ああ……俺……星史郎さんに憧れて、タバコ吸い始めたからね……」
「…………」
(つづく)
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