道玄斎さんのコラム 13:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第十三回「やっちゃダメ! 悪い資料の集めかた」

今日はちょっとダーク……というか、ヤバめの話でもしてみようかな。
最近では「危険ドラッグ」なんて名前が変わってしまったけど、それがまだ「脱法ハーブ」と呼ばれていたときの話だよ。




■ノベルゲームのリアリティ

私がノベルゲームのレビューを書くときに、少し気をつけて見ているところがあるんだ。
それは「リアリティ」。
「リアリティがない作品はダメだ」なんて言われるけど、私の考えているリアリティは、一般的な意味でのリアリティとはちょいと違うんだよね。

ひとことで言ってしまうと「ノベルゲームの中で活きるリアリティ」という感じかな。
現実そのまま、という意味でのリアリティは、ときに「ゲームの中で浮いて」しまうことがあるんだよ。

つまり“現実らしさ”、“本当っぽさ”を感じさせてくれるもの、それがノベルゲームの中で活きているリアリティというわけ。でなけりゃ、「ファンタジーにはリアリティがない」ってことになりかねないよ。ファンタジー世界なんて、ほんとうはないんだから。そうは言っても、現実のリアリティをつかんでおかないと、「ゲームとしてのリアリティ」も出てこないんだ。




■あるサークルの悪戦苦闘

とあるサークルが、ちょっとハードボイルドな作品を作ろうとしていたと思いねえ。
華やかな街の裏側にある、非合法組織とか、若者のチームの抗争なんかを描く作品だったんだけど、シナリオ中の「脱法ハーブ」をめぐってのいざこざが、大きな盛り上がりだったんだよね。

当たり前だけど、ハーブをやっている人間は、そのサークルにはいなかったんだよ。
もちろん、ネットをつかって体験談を探したり、ニュース番組などをチェックしたんだけど、ハーブによる酩酊感とかそういうもののキモがどうしてもわからない。
結局、メンバー随一のこだわり派だったライターが道を踏み外したんだ。


「やっぱり、ここは実際にハーブをためしてみるべきじゃないか?」

「おいおい! そりゃやべーよ!」

「そうだぞ! お縄になるかもしれないじゃんか」

「落ち着けよ。法律的には問題ないんだぜ? だからこそ『脱法』なんじゃないか」

「廃人になるぞ!」

「ほんとうに香りだけ、ちょっぴり雰囲気を味わったら捨てるから! それに次の作品、お前らだっていいものにしたいだろう?」

「そ、それは……」


ライターの必死の説得のよって、仲間の承諾が得られたわけなんだけど、やっぱり「作品作り」を持ち出されるとメンバーも弱いみたいだね。それが創作の魔性ってヤツなのかな……。

ともあれ、ライターは次の土曜日に、渋谷のホテル街をウロウロしてハーブショップを探すことになったんだ。


「もうすぐホテル街だな……」

「って、なんでお前もいるんだよ!」


そうなんだ。「お縄になるかもしれない」と主張した絵師も何故かついてきちゃったんだよ。本当はちょっと興味があったんだろうね。


「まぁまぁ。ほら、ハーブなんて怪しい場所でしか売ってないはずだろ? 一人だと危ない。二人なら心強いじゃないか」

「確かに……」


そんな調子でライターはうまく丸め込まれて、絵師と一緒に渋谷のホテル街に、百軒店のあたりから入っていったら、


「なんか、男二人でホテル街っていうのはヤバいな……」

「あっ! おい! 普通に売ってるぞ!」

「ほ、本当だ! まだホテル街にも入ってないのに!」


あけてびっくり玉手箱。ホテル街に入るその手前から、ハーブ屋さんは看板を出して絶賛営業中!お店は、繁華街のすみっこにありがちな、「アジアン雑貨のお店」を思わせるエスニックな雰囲気。人一人がやっと入れるくらいの入り口には、ウッドのすだれ(?)がかかっている。そして看板には「新入荷! おためしワンコインハーブ!」なんて書いてあったんだ。

意を決して店内に入ってみると、レゲエの雰囲気を出した、年かさのお兄さんがにこやかに「いらっしゃいませ!」と声をかけてくれて、再度びっくり。なんか、イメージしてたのよりも、ずいぶん明るい雰囲気なんだ。


「(おい……なんかイメージと違うぞ)」

「(ああ、店員のお兄さんもフレンドリーな感じだ……)」


 そうやって、コソコソ話し合っていたんだけど、耳ざといお兄さんは、


「なにかお探しですか?」


と、声をかけてきた。
そりゃそうだよ。狭い店内だもの。コソコソしたって意味がないんだ。


「あっ……いや、その……ハ、ハーブを……」

「ああ、初めてのかたですねー! 一応、お話させて頂くと、これはあくまで『鑑賞用』や『お香』としてのハーブなんですよ! だから吸ったりとかはやめてくださいねー!これはお香……お香……ね?」

「あっ、は、はい……」


それが、明らかに当局を意識しての「予防線」であることは、二人にもすぐにわかったんだけど、なんつーか、妙にリアルじゃないか。ここにきて、とんでもないところに来ちゃったんじゃないか? そう思っていたら、絵 師が、


「看板に、『おためしワンコインハーブ』って書いてあったんですけど、それ、どれです?」


とかなんとか、お兄さんに積極的に話しかけだしたんだ。
その絵師の発言をきいて、お兄さんは、ショウケースの下のほうから、なにやらゴソゴソと、箱を取り出した。


「これですねー。これ、一本で500円ですー」

「なんだかちっちゃなタバコみたいだなぁ」


お兄さんの説明によると、このちっちゃなタバコ型のハーブは「ジョイント」と呼ばれているものらしく、いわば新製品のサンプルとしての役目を果たしてるようなんだ。


「お、おい……本当に買うのかよ……」

「だって、お前が買いたいって言ったから来たんじゃないか!」

「それはそうだけどさー……」


もう、すっかり主導権は絵師に移っていたね。
「ハーブを試す!」と威勢よく言っていたライターは、ここにきて尻込みしてしまったわけだけど、このまま絵師に主導権を握られっぱなし、というのも、ちとシャクにさわる。なけなしの勇気をふりしぼって、お兄さんに話しかけたんだけど……。


「あ、あの……これ、どういう感じのものなんです?」

「あぁ、こっちのは“冷たい感じ”ですねー」

「え! 冷たい!?」


ハーブの形容として、あまりに不思議な「冷たい」という表現に面食らったライター。
そんな彼をよそに、お兄さんはさらに話をつづけるんだ。


「で、こっちは“エロい感じ”」

「え! エロい!?」


もう、なにがなにやらサッパリだよね。
もちろん、絵師も、この不思議な表現にやっぱりおどろいたみたいなんだけど、立ち直りも早かった。こいつ……やっぱりもともと、興味があったんだな……。


「じゃあ、その冷たいのとエロいの、一本づつ2セット下さい」

「かしこまりました! お会計はご一緒で?」


なんて調子で、話が進んでいき、ライターと絵師はそれぞれ「冷たいの」と「エロいの」を手にして、渋谷をあとにした。




■異国の音楽

「いやー、なんか壮絶な世界みたいだなぁ。くわばらくわばわら」

「ほんと怖かったですよ。店員さんが妙に明るかったのも逆に怖かった……! 気が小さい道玄斎さんならチビってたと思いますよ!」

「かもしれないなぁ。で、作品の資料にはなったの?」

「そこなんです! ちょっときいて下さいよ!」


彼(ライターね)は、帰宅してから念入りに「ハーブをやるときの心得」をネットで探して読みふけったんだ。どうやら、ハーブをやると「バッドトリップ」という、非常に悪い状態におちいることもあるらしい。そこでだいぶビビってしまったんだけど、「セッティング」といって、簡単に言えば「リラックス出来る環境作り」がちゃんと出来ていれば、それも防げる、という情報を得て、彼も何とかハーブをやってみよう、という気になったんだ。

出来るかぎりゆったりとした服に着替えて、すぐに横になれるようにベッドの上も綺麗にした。照明も間接照明で柔らかい、落ち着いたものに切り替え、ジョイントに火をつけた、ってわけだ。


「なんだかんだ言っても、タバコ型ですからねぇ。わりとすんなり吸えたんですよ。けど、全然なんともないんです。だからちょっと深く吸い込んでみたら……」

「みたら?」

「クラッときたんですよ! はじめてタバコを吸ったときみたいに、クラッとね」

「それでそれで?」

「ええ、平衡感覚がなくなっちゃって、ベッドに倒れるように横になったんです」

「まぁ、予想通りっちゃ予想通りだな」

「でも……その後が凄いんです! なんか思考……? というか、認知がゆがんじゃって」

「え? どういうこと?」


どうやら、話も佳境に入ってきたみたいだね。
そういえば、そのジョイントを取り出して匂いをかいでみたら、「背徳的な香り」がしたって言ってたよ……。やっぱり、ハーブなんてやっちゃダメなんだよ!


「それが、『今を認識している自分』を『認識している自分』を『認識する自分』みたいなループになってきちゃって……」

「うわー、なんか聞いただけで怖いよ!」

「それと同時に、音楽が聞こえてきたんです」

「音楽?」

「ええ。最初は自分の知ってる音楽が流れてきたんですよ。あっ、もちろん頭の中で」

「お、おう……」

「最初はB’zとかミスチルとかが流れてきたなぁ。けど、それもテレビのチャンネルを変えるみたいに、ブツブツと切り替わるんですよねぇ」

「こ、怖すぎる……」

「そうしたら、今度は聞いたこともない音楽が流れてきたんです」

「え? 聞いたことのない音楽?」

「そう、なんか妙にエスニックだったり、クラシカルな音楽だったり……一つ確かなのは、その音楽を僕は聞いたことがない、ということ。そして、ゾッとするほど美しい旋律で、その音に頭が支配されちゃうんです」

「ミュージシャンがクスリをやる理由がわかったな……」

「けど、その音が頭のなかにこだましていると、またブツッと別の、やっぱり魔的な旋律が流れてきて……」

「その音が鳴ってるときに、譜面にかいておけばとんでもない曲が出来たかもよ?」

「いやいや、とんでもないですよ! もう起き上がることすら出来ないんですから。実際の僕は、ベッドの上でうなってるだけなんです!」


いや、予想以上に怖い話だったよ。
もし、作品に「脱法ドラッグ」やそれに準ずるものを出そうと思っても、手を出すのはやめておいたほうがよさそうだね。

そういうものの資料が欲しくなったら、今回の話を参考にしてみてね。
せっかくライター君が体を張ってくれたんだから!


ゲームで活きるリアリティを生み出すためには、実体験も大事、って最初に書いたけど、こういうのは実体験しないほうがいいよ!
じゃあ、どうすればいいのか、っていうと、例えば、(ほんとは良くないんだろうけど)お酒を呑みすぎてしまったときの体験とか、薬(普通の薬だよ!)の副作用で気持ち悪くなったり、あるいは眠気が出たときとかの体験を利用すればいいんだ。

実体験出来ないものに関しては、自分の持っている体験を取り込んだり、そこから「想像」してやるといいみたいだね。

あれ……? そういえば、ライター君だけじゃなくて、絵師もハーブ買ったんだよな……?


「そうですよ! まだヤツのあくどい本性まで語ってないんですから、勝手にシメないでください!」

「そりゃ、失礼……。で、絵師はどうなったの? ハーブ使っちゃったんでしょ?」

「僕が復活した後で、あいつにメールを送ったんですよ。『ほんとうに危ないものだから、手をだすな!』って」

「優しいな」

「そしたら、なんて返ってきたと思います? 『お前が試すまで、俺は様子見してたから大丈夫だよ』だって!」

「ひでぇな! なんか『ちびまる子ちゃん』の永沢君みたいなヤツだなぁ!」


今回のお話はこれでおしまい。
実体験をうまく作品に取り込むっていうのは、とっても大事なことなんだけど、経験しなくていいこと、経験しちゃいけないことは割り切ろうね。
そういうときのために、書籍やこういう体験談があるんだから、ね。

(つづく)

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