道玄斎さんのコラム 39:道玄斎のノベルゲーム漫遊記
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●第三十九回「なぜノベルゲームを遊ばないのか」
早いもので、このコラムももう三十九回目だよ。
もう、記念すべき(?)四十回目まで、あと一本なんだよね。
そろそろここらへんで、無料ゲーム.comさんからご祝儀が出てもよさそうなんだけどもね!
それはさておき、今日は「座談会」の様子をお届けしようと思っているんだ。
なんの座談会かって? そりゃ、この連載は「ノベルゲーム漫遊記」なんだから、当然ノベルゲームについて、なんだ。
たまたま、10代後半?20代前半でゲームが好きな人たちが身近にいるものだから、ちょっとしたついでに、話を振ってみたってわけ。
凄く「リアル」な声もあるし、「論理が一貫してない」部分もある。
そしてなにより、「それがノベルゲーム制作や頒布に関して役に立つのかどうか」は、私にも未知数なんだ。
けど、そういう企画を立てて記事にしている人ってあまりいないと思うから、そういう 部分では、少しは楽しめるものになっているといいな。
■座談会開幕
ある日の夕暮れ。
とある部屋に集まった数人の男女あり。僭越ながら私が司会をさせてもらうことにしたよ。
「というわけで、本日はお日柄もよく……」
「ちょっとちょっと! もう夕方じゃないですか! 外だって真っ暗だし」
「そうですよ、早く帰りたいんですから、さっさと始めてください!」
「わかったよ……。まぁ、今日は、みんながゲーム好きだってのを見込んで、話を聞きたいと思ったんだよ」
「早い話が、ゲームについて語り合う座談会みたいな?」
「そうそう、まさにそれ。本当なら『孔子・老子・釈迦「三聖会談」』 みたいな感じにしたかったんだけど、司会の私からして、全然その器じゃないや……」
「なんです、それ?」
「おや、知らないのかい? これは奇書って言ってもいいくらいの本なんだけど、入手はやたら簡単なんだ。内容は、お釈迦さまや孔子さま、そして老子さまが司会進行のもとに会談をして、自らの説いた教えをやさしく話してくれる、って感じのものなんだよ」
「へぇー、変わった本もあるんですね」
「とっても面白い本だよ。まぁ、ちょっとお釈迦さまの発言は少なめだけどね」
「そんなことはどうでもいいですから、とっとと始めてくださいよ!」
■まずは自己紹介
まったく……知的好奇心がないってこまるよね。
みんなは、早く帰りたいってことでいっぱいなんだ。一応、お茶とお茶請けも用意したんだけどなぁ……。
「じゃあ、この座談会、原稿におこすかもしれないから、一応自己紹介してもらおうか。
トップバッターはA君でいいかな? 好きなゲームとかそのあたりをね」
「いいですよ。えっと、俺はFPSとかスマホのRPGが好きです」
「それだけ?」
「ほかに何を話せと?」
「わかったよ……次は、Mさんにお願いしようかな」
「はーい! 私はパズドラとかモンストとかそういうのが好きですね!」
「スマホのRPG要素のあるゲームが好きってことでいいかな?」
「はい、それでいいです!」
「お次は、K君、お願いします」
「俺もA君と似てるかな。けど、Fate/Grand Orderなんかもやってますね」
「ふむふむ。やはりスマホ系か。じゃあラストはYさんにお願いしよう」
「わたし……そんなにゲーム好きじゃないかもしれない……」
「えぇ!?」
「あっ、いや、好きなことは好きなんだけど、そこまでゲームに熱心じゃないっていうか」
「ライトユーザーって感じかな? いや、いいですよ。そういう人の意見も大事なんで」
■いきなり核心
というわけで、一通り自己紹介が終わったわけなんだけど、男性2人に女性2人となかなバランスはいいんだ。
ともあれ、ここまでの話だけで、基本「スマホゲーム」が彼らのなかで主流になっているっていうのはわかるよね。
今日は人数が多いから、それぞれの発言の前に名前を冠することにしようかな。
私が発言するときは「道」みたいにね。
道 「じゃあ、いきなりズバリきくけど、なんでみんなRPGばっかりなの? 誰か答えられる? おっとA君、なにかモノいいたげだね」
A 「そんな顔してました? けど、別にRPGにこだわってるってことじゃないですよ。
なんていうか、ゲームって暇つぶしでしょ? 暇がつぶせればいいし……」
道 「つまり、RPGやあるいはFPSが暇つぶしにはもってこいだと?」
A 「いや、ゲームってものそれ自体が暇つぶしの娯楽じゃないですか」
道 「ふむふむ。A君にとってはゲームとは『暇つぶし』のために存在していて、たまた まRPGやFPSをやってるって感じかい?」
A 「そんな感じです」
道 「たとえばさ、ノベルゲームなんてのはどうだい? あれも暇つぶしっちゃ暇つぶしなのかもしれないけど、読書体験に近い部分ってあるじゃない? 単純に暇な時間を消化するってだけじゃなくて、もうちょい中身を求める傾向ってのもあると思うんだけど」
A 「そんなこと考えてゲームしてる人いませんって!」
ううむ……。
どうやら、A君にとっては「ゲームとは暇つぶし以上のものではない」ということみたいだね。
つまり、彼にとっては「ノベルゲーム」だとか「RPG」だとか「FPS」だとか、そういったジャンルにこだわっているってわけではないみたいだね。
だったら、「ノベルゲーム」と向き合う機会があってもよさそうではあるんだけどな。
道 「じゃあさ、スマホのノベルゲームで『NOeSIS?嘘を吐いた記憶の物語?』ってのがすごいヒット作なんだけど、やってみたいと思う?」
A 「うーん……」
M 「私は自分のまわりでヒットしてないから、やりたいと思わないです」
A 「俺は……そもそもノベルゲームはやらないんですよねぇ」
道 「Mさんは『自分のまわりでヒットしているかどうか』が重要なわけね。で、A君はどうしてノベルゲームはやらないの?」
M 「競えないからかな」
A 「うん」
おっと、ここにきて、「競う」というキーワードが出てきちゃった。
確かに、ノベルゲームってそういう「競う」部分がない(か非常に少ない)よねぇ。
なんか、彼らと話していると「ノベルゲーム」というゲーム自体が、彼らのいう「ゲームの範疇」から外れてるような感じがしてくるよ。
Y 「やっぱり、同じゲームをして同じ話で盛り上がれるのがいいと、うちは思います」
M 「それはノベルゲームでもできるよ」
道 「けど、スコアの高い低いで盛り上がったり、ってのは確かにノベルゲームでは出来ないし、Mさんの発言にあったように、『そもそもまわりでやってる人がいない』ってことなら、盛り上がるもなにもないもんね」
Yさんの発言は言葉足らずなんだけど、要するに「話題にしやすい」「話題になりやすい」ほうがいい、ってことなんだろうね。これはMさんがいった「まわりで流行ってるかどうか」ってとことも、通じてるよね。
と、思いきや……
Y 「まわりがノベルゲームをやってても、自分が楽しめないと意味はないかな……」
M 「それそれ。自分が触れたことがなければピンとこないしね。あと、みんな『読む』より『入り込む』ほうがいいんだと思う。俯瞰よりなりきり」
K 「RPGはそういう要素あるねー」
A 「FPSもな」
うーん、なんかごちゃごちゃしてきたなぁ。
Mさんは「まわりで流行ってるかどうか」を、重要ポイントとしてあげていたはずなんだけど、「自分が楽しめるかどうか」っていうのも、やはりポイントになるらしいね。
ちなみに、こういう感じで話していくと大体、女性のほうがガンガン話して、男性は委縮していく傾向にあるね。ま、これは余談だね。
この後は、もう好き放題しゃべる感じになっちゃったから、省略省略。
あれ……? 真面目な座談会の雰囲気があったのは、10分足らずじゃないか……!
■乙女ゲーのヒット要因
結局これってまとめられないよねぇ。
ただ、1ついえそうなのは、「彼らにとっての“ゲーム”のなかに、ノベルゲームは入っていない」ってことだなぁ。
あと、やっぱり「そのゲームは、スマホで遊べるものがメイン」だっていうあたりかな。
けど、単純にスマホでノベルゲームを配信したからって、それで即遊んでもらえるわけじゃないだろうから、なかなかに難しいよね。
そうはいっても、考えるべき問題ってのもあったんじゃないかな。
例えば「俯瞰じゃなくてなりきり」っていう言葉には、ちょいと深いものを感じるな。
多くのノベルゲームの場合、「PCの前に座っているプレイヤー」がいて、そいつがクリックを介して、物語を読み進めることで「主人公」が動き、「ヒロイン達」とつながっていくんだよね。
となると、プレイヤーというのは当然「主人公」とイコールではないんだ。
つまり、一枚壁をへだてているというか、「俯瞰」で見ていることになる。
RPGなんかももちろんそうなんだけど、こちらの操作した通りに、キャラクターが動き、好きなように戦えたりするから、確かにノベルゲームよりは「なりきり」度は高いってことかな?
ノベルゲームは選択肢によって、物語を派生させていくことが出来るけれども、シナリオに書かれていない行動はとれないんだ。
この「なりきり」感に着目していくと、乙女ゲーや「乙女向け」のコンテンツが昨今充実してきている理由も、おぼろげながら見えてくる気がするんだ。
ノベルゲームである以上、「なりきり」要素は薄いんだけど、乙女ゲーの場合、かなりの高確率で「主人公の名前」が変えられるんだよ。デフォルトネームが「ルイーズ」とかでも「ともみ」「ゆきこ」とか、自分の名前を入力できる。
さらに「主人公の個性」をどんどん減少させていくことによって、プレイヤーと主人公を重ねていくような部分だってあるんだ。乙女ゲーのサーチエンジンを見てると主人公の「個性」のありなしで、作品を分類したりしているよね。
そして、最後に残った「主人公」の属性は、
・かわいい(けど、取り立てて美人とはいわれない)
・没個性的だけど、なぜか愛される性格
なんだよね。
ここは、「プレイヤーと主人公を重ねる」というところから一歩はみでて、「理想の自分」へと近づけていく仕掛け、ともいえそうだよ。
してみると、乙女ゲーやその関係界隈の「ヒット」要因の一つには、「なりきり」度を高める、というのと、「理想化された自分を見せてくれる」という二つの要素がありそうな気がするんだ。
当たり前っちゃ当たり前のことなのかもしれないけど、これから乙女ゲーで一旗あげようって人には、参考になる部分もあるかな?
ちなみに、「競う」って要素は、ソーシャルゲームが強いんだよねぇ。
実際に、ノベルゲーム的なソーシャルゲームもあるんだよ。たとえば『ようこそ! 恋ヶ崎女学園へ』とかね。
これは、かなりノベルゲームに近いんだけど、「イベント」が定期的に開催され、「ランキングに食い込むかどうか」が焦点となっていくんだ。もちろん、上位成績をあげるとプレゼントがあったりする。
なので、ダウンロードしてプレイするタイプのノベルゲームにはない「競う」って要素は、ソーシャルゲームが先鞭をつけている、ともいえるかな。
ただ、やはり物語的には「薄い」というのはひっかかるね。
よく練り込まれた物語を読ませる、というよりは、「競う」要素を全面に出したり、エッチシーンを餌に(?)、課金を促す仕組みだから、ちょいと「ノベルゲーム」の本道とは違うかな、って気はするね。
■まとめ
うーん、グーな発言をしてくれたのが女性だったからかな?
なんか、女性向けの話が多くなっちゃったな。
乙女ゲーだけじゃなくて、ノベルゲーム全般に関していえば、やっぱりまずはノベルゲームという存在を「知ってもらう」ってことが必要かもしれないね。
結局、ノベルゲーム界隈の人はノベルゲーム界隈の人とつながっているわけで、それはそれで居心地がいいんだけど、内輪で完結しちゃう部分っていうのもあるでしょ。
若い人たちの「ゲーム」の範疇に「ノベルゲームってのもあるぜ!」と叩き込めたなら、そして「暇つぶし以上のなにか」があると、知ってもらえたなら……なにかまた、ノベルゲームにも新しい動きが出てくるんじゃないかな、って私は期待しているんだ。
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(つづく)
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