道玄斎さんのコラム 40:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第四十回「多産ゲームの世界を探る」

 ついに、このコラムも第四十回目を迎えてしまったんだ。
 よく、四十回も原稿書けたなぁ……。だいたい毎回10KB前後の分量なんだけど、さっきちょっと計算してみたら、これまでに345KBも書いてるんだ。
 これは、ちょっとした文庫本一冊分くらいの分量なんだよね。

 これだけの分量を書いたとなれば、ちょっと交渉してみる価値があるな……。


「もしもし、無料ゲーム.comさん?」

「あれ? 道玄斎さんですか?」

「そうだよ」

「どうしましたか?」

「いやね、コラムももう40回目じゃないか」

「そうですねー、いつもありがとうございます!」

「うん、そこでね……文庫本一冊くらいの分量もたまったことだし、前回もチラっと話したんだけど、ご祝儀があっても……」

「じゃあ、こういうのはどうです?」

「(え? もらえるのかな? なんでもいってみるもんだな)なんだい?」

「つまりですね、文庫本一冊分の分量がたまったわけでしょ? だったら電子書籍でも自費出版でもいいですから、本にしちゃうんです。そうしたら売上が入ってきますよ!」

「え?」

「どうしました? いやぁ、それにしてもたくさん書いてもらったなぁ」

「じゃ、また近いうちに10KBの原稿送るからよろしく……」




■たくさん書くといえば……。

 どうやら、ご祝儀をもらう計画はいつも失敗するみたいなんだ。
 けど、無料ゲーム.comさんの発言のなかに「たくさん書く」という言葉があって、これは、今回のコラムのネタになりそうではあるね。

 というのも、フリーのノベルゲーム界隈には「やたらと多産な作者さん」っていうのがときどき、姿をあらわすからなんだ。


 一昔前のフリーのノベルゲーム華やかなりしころにも、そうした作者さんはいたんだよ。
 代表格は、やっぱり 「あおぞら幼稚園」 というサイトを運営していた雪双葉さんだね。

 「エロゲー批評空間」というサイトに、彼が作ったゲームのリストが載っているんだけども、総制作数はなんと20本以上! 『おにあい ?だって好き好き大好き?』 という怪作(?)をリリースしたことで、一気に有名になったんだ。

 その後、雪双葉さんは1?2か月に一本、という超ハイペースで作品をリリースしていくことになるんだけど、残念ながらサイトは消失してしまい、この界隈からいなくなってしまったみたいなんだよね。

 ちなみに、上にあげた「20本以上」の作品のほかにも、「どうやらこれは雪双葉さんが企画主となって作ったとおぼしき作品」も何本かあるから、本当の総量はすごいことになってるはずなんだよ。


 雪双葉さんの特徴は、「企画力」と「人集め」のスキルに異常に長けているというところなんだよ。

 初期の作品では自ら絵を描いていたんだけど、途中から絵師さんを誘致してくるようになる。しかも毎回、かなりのクオリティの絵師さんを連れてきていたし、とかく頓挫しがちな複数制作者による「企画」もいくつも成功させている(ダメになっちゃったのもあるんだけど)。

 そうした企画の際には、絵師さんだけでなく、凄腕のライターさんも誘致してきて、そのなかには、第一線で活躍している「プロ」や「その後プロになった人」も多く含まれているんだ。




■多産の時代へ

 こうした雪双葉さんの活動が終焉に向かうと、まるで彼の意志を引き継ぐかのように、多産傾向を持つ作者さんが、ちらほらと目に入るようになってきたんだ。

 その多くは女性作者さんなんだけど、その背景には、当時のフリーのノベルゲーム界隈のトレンドもちょっと影響があるように思えるな。


 というのも、当時、「小規模なコンテスト」というのがものすごく流行っていたんだよね。
 これはレギュレーション(全体の分量、使用素材、制作期間など)が決められていて、小粒でひねりの効いた作品が勢ぞろいする、という感じのものだったんだよ。

 代表的な小規模コンテストとしては「ガールズパーティ」「シナリオの鉄人」なんかがあったね。

 ともあれ、そうした「小粒」な作品の良さや、「レギュレーションがあるが故の作りやすさ」が認知されて、地ならしが行われるにいたって、「多産傾向を持つ作者さん」が増えてきた気がするよ。


 そういうわけだから、多産とはいえ、作品の傾向というのは割と似てるところがある。
 たとえば、


  ・登場人物は2人が多い(わたしと彼、俺と彼女、みたいな)。

  ・物語を積み上げるというよりは、ギミック的な部分に比重がおかれている。


 こんなところがわかりやすい特徴といえるだろうね。
 また、


 ・一時期、ガーッと活動したと思ったら、ゲーム制作から引退してしまう


 そんな制作者さんも多いよね。
 ま、この「一時期」っていうのもハバがあるんだけどね。人によっては数か月、あるいは年単位で続くこともあるよ。




■多産の長所と短所

 そもそも、フリーのノベルゲームって「定期的に何作品もリリースする人」なんて本当に少数なんだよ。

 いや、これはフリーに限らないかな……。
 商業のゲームメーカーでも、新しいメーカーが生まれては消えていくわけで、実は状況としては同じような感じなのかもしれないね。


 一作品、あるいは二作品を世の中に残して消えてしまう個人制作者が多いなかで、とにもかくにも複数本を作品をリリースするってことは、それはすごいことだよね。

 さて、肝心の「多産」の作品なんだけど、実は面白いんだよ。
 何の気なしに、ダウンロードして遊んでみると、小粒ではあるけど、ひねりやギミックが効いていたり、なにかこう「キラキラしたもの」を感じさせてくれることもある。
 それまでのノベルゲームにない、なにか新しい感じがするんだ。

 それはともかく、一か月とかすると、同じ作者さんがまた新作を出している。
 「お! 新作が出たのか!」なんて思って、プレイしてみると、やっぱり楽しめることは楽しめるんだけど、一作目よりパンチが効いてないような気もしたりして……。

 さらに、また一か月すると「三作目」が出てくるんだけど……段々、処女作が持っていた魅力が褪せていくように私には感じられるねぇ。


 つまり、多産の作品というのは、多産であるがゆえにどうしても小粒になりがちなんだ。
 だから、ストーリー的な展開は乏しくマンネリになってきちゃうんだよ。それにアッと驚くようなギミックってそれなりに時間をかけて練らないと出てこないよね。

 小粒であるが故に読みやすくて、ときどきハッとするようなものを持っている。
 また、連続して作品をリリースするから、追っかけていきやすいし、それが一定以上楽しめるものだってのは、わかっている。

 多産の作品の長所と短所っていうのは、だいたいこんなところなんじゃないかな?




■手段と目的

 リリースを重ねるたびに、マンネリ感が強くなるっていうのを、多産作品の問題としてあげたわけなんだけど、そこにはもうちょっと根深いものが潜んでいるんだ。

 つまり、「最初はこういう作品を作りたい!」という意志があって作品を作っていたはずなんだけど、段々と「ゲームをリリースする」という行為そのものが目的になっていっちゃうんだ。簡単にいえば、「手段が目的になってしまう」んだよね。

 これは多産の作者さんが陥りやすい問題なんじゃないかな。
 もちろん、それが悪いってことはないんだよ。けど、一方で「ダウンロード数が頭打ちになってる……」「もっといろんな人に作品を知ってもらいたい」という悩みをかかえている多産作者さんも多いから、書かせてもらったんだ。
 ダウンロード数が頭打ち、っていっても、かなり立派な数字なんだけどねぇ……。


 そうしたときにどうすればいいのか、といえばそれは簡単なんだ。
 「今までしなかったことを試す」しかないんだよ。

 たとえば、3か月連続リリースしたいのをグッとこらえて、密度を3倍にした作品を作るとか、姑息な方法かもしれないけど、訴求力のある絵師さんを誘致してくるとか。はたまた、「実況用」に最適化したものを作ってみる、とかね。

 ま、私は「ストーリー」を楽しみたい人間だから、そっちのほうに力を入れる、という王道的なアプローチをお勧めしておこうかな。

 いずれにせよ、今までの流儀から離れるわけだから、ちょっと勇気は必要だよ。
 けど、実行してみればそれは確実に、自分のゲーム世界を広げることになるよ!




■今年最後の……

 と、こんな話をしていると、多産作者さんとコラボ制作をしたことがあるS君がやってくるんだ。ちょっと多産作者さんには一家言あるようだからね。

 S君は、地道に作品をリリースしていて、固定ファンも多いんだよ。
 そんな彼に、勢いのある多産作者さんのほうから「一緒に制作しましょう!」と持ち掛けられて、一緒にゲームを作った経験があるんだ。


「なんか、結構大変だったみたいだねぇ」

「そうなんですよ、ゲームそのものはちゃんと完成して、楽しんでもらえたみたいなのでいいんですけど」

「けど、頓挫しそうになったんだっけ?」

「ええ。それがイラストがあがってこないとか、素材を探すのに手間がかかって、とかならよかったんですけどね」


 うーん、何か深刻な事態が起きたらしいね……。
 聞いてみたいような、聞くのが怖いような……。


「聞いてくださいよ! けどこれもコラムに書くんでしょ? 色々ボカしてくださいね!」

「コラムに書くか書かないかは、内容によるよ。あまりにヤバい話だとさすがに書けないぜ?」

「ボカしてくれるなら大丈夫ですよ。まぁ、つまりですね、向こうもライターさんで、こっちもライターでしょ?」

「そうだね。それで?」

「僕も向こうもツイッターをやっていて、自分の作品をプレイしてくれた人とつながってるんですよね」

「当然、フォロワーさんが共通してたりするんでしょ?」

「そうそう! まさにそこなんですよ! ツイッターで『今度、合同でゲーム出しますよ!」って告知をしたんです」

「ふむふむ、それで?」

「そうしたら、共通するフォロワーさんが『Sさんの書くルート楽しみです!』なんてリプライをくれたんですよ」

「いいじゃない。なにが問題なのよ?」

「いや……それを見た多産作者さんが、すねちゃったんです」

「えぇ!?」

「『Sさんばかり期待されていて、自分は必要とされていない……』とか言い出しちゃって……」

「それは……また……」

「で、関係がギスギスしちゃうし、向こうはパタッとシナリオ書かなくなっちゃうし」

「けど、完成したんだよね?」

「なだめたり、盛り立てたり……もうほんと大変だったんですよ!」

「それは大変だったね……けどさ」

「けど?」

「それは、多産作者さん全体の話じゃなくて、その人、個人の問題だぜ!」


 というわけで、今日のお話しはおわりだよ。
 最後に書いたみたいに、「コラボ制作」っていうのも、色んな問題があって、それを話すだけでも、まだまだコラム2本分くらいは書けそうだね。

 ともあれ、2015年の私のコラムはこれでおしまい。
 また、2016年もよろしくお願いします!

 それでは、よいお年をお迎えください。



●コラムや記事の執筆依頼などは、ツイッター あてに
 お気軽にメッセージをお送りください。

(つづく)




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