道玄斎さんのコラム 19:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第十九回「BGMの深淵な世界へ」

 さて、今回は、ノベルゲームの三要素、その最後の「音」関係についてだよ。
 効果音の話は、以前のコラムでもやったから、いわゆる「BGM」についての話がメインになるかな。




■音は意外と盲点かも

 ノベルゲームでシナリオが大事だ、っていうのは、みんな知ってることなんだよね。
 綺麗なイラストがついていれば、ダウンロードや販売数が伸びる、というのも周知のとおりだよ。

 だからこそ、「シナリオの書きかた」なんて本やコラムをみんな読むし、よい絵師を探すのにも必死になるんだ。

 けど……「音」っていうのは盲点になってるけど、ものすごく重要な要素じゃないかい?


「まったくですよ! ノベルゲーム界の音への認識は、その他のメディアとくらべものにならないくらい遅れてますよ!」


 と、気炎をあげているのはG君。
 彼はノベルゲームの愛好家にして制作者でもあるんだ。BGMを自作する作曲家でもあるから、やっぱり音に対しては気になるんだろうね。


「そういう道玄斎さんも、曲作ってるじゃないですか」

「まぁ……一応ね……。けど、世の中には実力のある作曲者さんっていっぱいいるから、そんななかで『俺も作曲者だぜ!』って自信を持って言えないんだよね……」

「あれ? 商業作品のBGMを作ったこともあったんじゃ?」

「うん、まぁ……。ありがたいことに商業、同人シェア、同人フリーと一応、一渡り使っていただいてます……」

「なのになんで、そんなに卑屈になるのかなぁ?」


 いや、まぁ、なんていうのかな、私の作曲法ってかなり「スタンダード」なそれとは違うんだよね……。音楽的な素養があって、しっかりと曲を作っていく、というのではなく、むしろDJ的とでも言うのかな。だから、なんか気後れしちゃうんだよねぇ。


「まぁ俺のことはいいんだ。今のトピックは『音の問題』だよね」

「ええ、そうでした。ノベルゲームにおける音とは何か……サウンドスケープとは……そして、我々はどこに向かっていけばいいのか……」


 G君は、わりとこうやってディープなほうディープなほうに流れていってしまうところがあるんだ。
 私は飽きっぽいから、考えにつまったら「めんどくさいから、もういいや……」ってなってしまうんだけどもね。その意味で、私はG君を尊敬しているんだ。

 けど、そんなめんどくさがりの私でも、ノベルゲームにおける音となると、ちょっと考えないといけないな、って思ってる問題はあるんだ。

 そうだな、例えば、私達は「BGM」なんて呼ぶことで、「音」(特に作中で流れる音楽)をひとくくりにしてしまうよね? けど、そのBGMだって、実は大きく2つにわけられるんじゃないかな?


 まず、ゲームをプレイする私達のいる世界を「こっちの世界」と名づけよう。
 次に、ゲーム内のキャラクター達が住んでいる世界を「あっちの世界」としようか。
 すると、例えば、日常シーンで流れるBGM、あるいは感動的なシーンで流れるBGMというのは、「こっちの世界」へむけての音ということになるよね?

 わかるかな?
 つまり、私達が日常生活を送っていても、そこに「軽快なBGM」がどこからともなく流れてくることはないんだ。あるいは、私達が異性といい雰囲気になっても、そこで「オルゴール曲」が流れてきたり、「ピアノとストリングスの曲」が流れてくることはないんだよ。
 だから、ゲーム内で、そういうシーンで流れるBGMは、「プレイしている私達」に向けての音なんだよね。

 一方で、ゲームのなかで、キャラクターが「パチンコ屋」にいったとしようか。
 すると、BGMが切り替わって、きっと「軍艦マーチ」かなんかが流れてくるはずだよ。
 それは「ゲームのなかで、キャラクター達が聞いてる音」、つまり「あっちの世界の音」だよね。


 これは、なにもBGMだけじゃなくて、効果音(SE)でも同じことが言えるよ。
 悪友キャラが、主人公やヒロインにイジメられて、オチがついたとき。ちょっとトボけた効果音が聞こえてきたりするよね? あるいは「ちゃんちゃん!」みたいなヤツとか。
 これも、「こっちの世界」に向けての音だよ。

 けど、廃屋に侵入したとき、奥の部屋から聞こえてくるドアがゆっくりと軋みながら開く音、殴られたときの打撃音、あるいはガラスが割れた音……。これは「あっちの世界」で鳴ってる音なんだよ。

 どうだい?
 音にも2種類あるでしょ? けど、「こっちの世界」にいる私達は、「あっちの世界」で鳴っている音も認知出来るんだ。考えてみると、これはけっこう不思議なことなんだけど、まぁこれは、ゲームの構造上の問題でもあるよね。


「あれ? “あっちの世界”と“こっちの世界”の話は、僕が最近読んだ『映画音響論』にも書いてあったなぁ」

「ああ、教えてくれたあの本ね……」

「道玄斎さんパクりましたね?」

「いや、パクってないよ」

「えー、ウソだー!」

「ホントだよ、だって、あの本、高くて俺には買えなかったんだぜ!」


 まぁ、落ち着いて考えてみれば、「あっちの世界」「こっちの世界」の話も、誰にでもわかることだから、そうした本に、同じ話題がのっていてもまったく不思議はないんだ。

 とはいえ、「音」について、こうやって考えてみたことのある人っていうのも、少ないんじゃないかな?
 そして、そこにこそ、ノベルゲームにおける「音の可能性」があると、私は思っているし、そこは商業作品よりも、フリーや同人のほうが試行錯誤して、チャレンジしやすと思うんだよ。


「どうしてです? 商業はお金があるし、フリーなんかよりよっぽど色々出来るんじゃ?」


 そんなG君の疑問はもっともだね。
 それじゃあ、私が経験したり、聞いたことのある商業の現場の話をしてみようか。


「まずさ、商業作品を作ってる会社があるとしよう」

「ふむふむ」

「そこで、ゲーム内のBGMに関して決定権を持っているのって誰?」

「それは……サウンドチームの人なんじゃ?」

「ぶぶー! ハズレ。 そもそもサウンドチームまで自前で持ってる会社のほうが少数だよ」

「えー! じゃあ誰なんです?」

「ライターだよ。メインのルートを執筆してるライターにより多くの決定権があるみたいだけどもね」


 そうなんだ。
 多くの場合、ゲーム内のBGMは、ライターの管轄でもあって、「どの音を採用するか」というような決定権を持つ場合がかなり多いんだ。


「そもそも、『こういう音が欲しい』って発注するのはライターだよね?」

「たしかに……。サウンドチームから『こんな音どうっすか?』って売り込むわけじゃないですもんね」

「で、注文を受けてつくられた音を聞いて、その可否を決めるのも、当然ライターなんだよ」

「でも、ライターが『音』に対する認識をしっかりと持ってくれれば、問題ないんじゃないかなぁ?」

「そうかな? ライターが発注するとき、何のサンプルも音屋さんにわたさないと思うかね?」

「というと?」

「会社によって違うんだけどもね、けっこう一般的なのは『他のゲームのサウンドトラックから、イメージに近い曲をピックアップして、音屋さんにサンプルとしてわたす』というやりかただよ」

「え? それじゃあ……」

「うん、商業の現場で行われているBGM作りっていうのは、誤解を恐れず言ってしまえば、『既存曲の再生産』なんだよ」


 音屋さんの仕事は、「オーダーを忠実に守って曲を作ること」だから、サンプル曲の雰囲気を忠実に再現するし、そこに個人的な冒険を入れることは難しいんだ。入れたとしても「この音はカットしてよ」なんて言われちゃったりするしね。

 またライターの側からしても、ノベルゲームのセオリーから外れるような音は、冒険になってしまうんだ。当然、ゲームを商業ベースで作る以上、「安全策」を採りたいもの。


「うーん、未来がない!!」

「とはいえ、業界をリードするような著名なメーカーでは、積極的に、フックのある音を使ったりもしてきているし、少しづつ音に対する認識っていうのも、変わってきてるんじゃないかな」

「そういえば、道玄斎さんも、同人の乙女ゲーで、積極的な音を使うところも増えてきた、って言ってましたもんね」

「うん、こういうところは、女性のほうが柔軟性が高いみたいだね。ただ、1つ言えることは、『悲しいシーンにはピアノの切ない曲を』『感動的なシーンでは、ストリングス、ピアノの壮大な曲を』『回想シーンではオルゴールを』というようなセオリーがだんだんと崩れてきてる、ということだよ」

「もちろん、セオリー通りでもいいわけですよね?」

「うん。だけど、そういうところで一味違う音を使う人もチラホラ出てきた、ってことなんだ」


 この音の使いかたにも、色んなケースが想定出来るよ。
 曲調そのものを、「今までは合わないと思われていたもの」にして、ズラしの効果を出すとか、「セオリーに近い曲だけれども、こだわりの音が対旋律を鳴らしている」とかね。

 個人的には「トリップホップ」なんてジャンル(この呼びかたは、あまりよくないんだけど、ここでは分かりやすさを優先しよう)は、伝奇やホラー、ミステリーなどの、ちょっと暗さのある作品に合いそうな気がしてるんだ。
 トリップホップをこれらのジャンルで使うと、セオリー通り、という気がしないでもないんだけど、それでも、やっぱり一味違うダークでグルーミーな世界が表現出来るよ。

 他にもエレクトロニカなんかは、わりと使われてきているジャンルではあるんだけど、ピアノと混ぜたりするような、優しさ、柔らかさ、温かみを感じさせるエレクトロニカっていうのもあるんだ。こういうのは、汎用性も高いんじゃないかな。


 話を戻そう。
 つまり、商業的な制約がないぶん、フリー、同人で活動している人達のほうが、色々な音の実験が出来る、ってことなんだよね。
 もちろん、それには作り手も、色んな音楽に接して、それらの知識がなきゃいけない部分はあるんだけども。

 そうは言っても「音って意外と可能性が残ってるな」って、ちょっと意識するだけでも、音の運用方法に雲泥の違いが出てくるんじゃないかな。


「なるほど。僕も次の作品では、そこらへん考えながらやってみようかな」

「ぜひ、そうしてみてちょうだい」

「あっ、あと最後にひとつ……」

「ん? なんだい?」

「今回の話のオチってどうなってるんです?」

「え!? オチ?」

「毎回、オチをつけてるじゃないですか」

「俺はコント作家じゃねーよ!!」

(つづく)

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