道玄斎さんのコラム 29:道玄斎のノベルゲーム漫遊記



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●第二十九回「誤字や誤用を考える」

 実は一週間以上、エアコンがない生活をしていたんだ。
 というのも、エアコンが壊れてしまってねぇ……。だからネタはあったんだけど、ちょっとコラムを書く気にはなれなかったんだよ。




■他山の石

 先日、ちょっと人前で話す機会があって、その時、「?ということがあって、これはくだらない話ですが、他山の石にしてくだされば幸いです」ってなことを言ったんだ。

 その後、参加者の1人から怒られてしまったよ。


 「他山の石とはなにごとか! そんなにお前はえらいのか!」


 ってね。
 それを聞いて、私はびっくり。
 もちろん、私は自分のことなんてえらいと思っていないし、自分のくだらないバカ話を披露して、笑ってもらうつもりだったんだ。

 小心者の私は、怒られちゃうとつい反射的に「すみません!」って言っちゃうんだけど、その人と話をしてみると、なんかヘンなんだよ。お互い話がかみあっていないというか。

 で、やっとその違和感がわかったんだ。
 つまり、「他山の石」の解釈の違いだったというわけ。

 今、きっとみんなはネット越しにこの文章を読んでいるだろうから、ためしてみてもらいたいんだけど、「他山の石」で検索をかけてもらえるかな?

 そうなんだ。
 「他山の石」っていうのは、「よそのつまらない石」っていう意味で、転じて、「つまらない役に立たないようなものだけど、何かの参考にどうぞ」くらいの意味なんだよ。

 だけれども、私に怒った人は、その他山の石を「参考にすべき到達点」みたいな、上から目線の意味だと思っていたようで、そこでお互いが食い違っていたんだ。


 うーん、こういう慣用表現みたいなものも、その捉えかたがずいぶん変わってきているようだね。




■まずは誤字から

 そういえば、誤字や言葉の誤用に関して、以前ノベルゲーム仲間と話したことがあったっけ。


「ほんっと最近のゲームは誤字が多いなぁ。道玄斎さんもそう思いません?」

「俺もさ、ノベルゲームのレビューを書くときに、誤字脱字の指摘をしたりするんだけど、最近は、ちょいと考えかたが変わったんだよね」

「というと?」

「うん、つまりさ、別にその人の国語能力が低いから誤字が発生する、ってわけじゃないんだよ。誰だって誤字や脱字があるもんなんだ」

「む? えらく今日は寛容ですねぇ。てっきり、『そうだそうだ! 最近の若いもんはけしからん!』って話にのってくるもんだと思ってました」

「俺も成長したんだよ」

「えー……ホントかなぁ……」

「いや……自分がゲーム作ってみて、最大限気をつけたつもりでも、やっぱり誤字脱字が発生したから、なんだけどもね」

「あぁ、やっぱり。そういう経験がないと、道玄斎さんがそんな寛容なこというはずないですよね!」


 もう、まったく……いいたい放題だな。
 まぁ、いいや。

 とにかく、誰にだって誤字や脱字は起こり得ることなんだよ。
 だからこそ、しっかりと書き上げたテキストを見直したり、信頼できる人にデバッグしてもらうのが大事なんだ。

 とはいえ、誤字が発生しやすいモノっていうのもあるよ。
 多分、変換のミスが原因になっているんだろうけど、


 ○意外と  ×以外と

 ○延々と  ×永遠と

 なんかは、よく見かける誤字だね。
 「延々」と「永遠」は意味もなんとなく似ているし、結構間違いやすいんだ。


 一方で、誤字とは違うんだけども、ちょっと辞書をひく手間を惜しんでしまったがために生じた誤用もあるよ。
 「他山の石」を、「参考にすべき到達点」と誤解してしまったような、ね。

 代表例は、


 「姑息」

 「敷居が高い」

 「憮然」

 「役不足」


 と、こんなとこかな。
 それぞれの正しい意味はぜひ、辞書で確認してみて下さい。
 けど、私なんかも、ついうっかりミスしてしまいそうでこわいよ……。つい「不機嫌」って意味で、憮然を使っちゃいそうだもの!




■許容をどう考えるか

 けど、こうした誤用に関しては反論もあるんだ。
 たとえば、「敷居が高い」を「ハードルが高い」の意味として捉えたり、使っている人のほうが多いのだから、もう、そっちの意味で使ってもいいじゃないか、ってことだよ。

 つまり、日本語の許容をどう考えるのか、って問題なんだ。
 確かに、日本語はどんどん変化しているのは事実なんだよね。それが証拠に、私達は、「明日は晴天ならむ」なんて日本語は使ってないんだ!


 そういえば、昔、遠藤周作が書いたエッセイだかで、「死に様という言葉はあるが、生き様という言葉は辞書には載っていないから誤り」という一文があったんだよ。

 これはどう思う?
 多分、一つは「辞書が、ある日本語の正否を判定していいのか」という問題があると思うんだ。

 その意味では、私は遠藤周作の言ってることは間違ってると思う。
 だって、辞書にしたがって私たちは、言葉を発しているんじゃないんだもの。むしろ逆で、私たちが使っていくなかで、熟成された言葉が辞書に載録されるんじゃないかな?

 それに、辞書に載っていないから誤り、としてしまったら、その後辞書に載るようになった言葉をどう考えればいいんだろう?
 ある時点では、この言葉は辞書に載っていないから誤りだけど、この時点からは辞書に載ったから正しい言葉となった、と考えるのかな。やっぱりそれも違和感があるよね。


 もう一つの問題点は、「ある言葉が存在すれば、それを逆にした言葉が生まれても不自然ではない」ということだろうね。
 つまり「死に様」という言葉があるなら、その「死」を逆にして「生」とする。結果、「生き様」という言葉が生まれる。
 これも、私には自然なことだと思えるんだけどなぁ。




■辞書にも特色が

「遠藤周作なんか出してきて、今日はえらく真面目ですね……」

「まぁね。たまには、そういう部分もみせておかないとただのヘンなオッサンだと思われちゃうからさ」

「(ヘンかどうかはともかくとして、オッサンなのは間違いないよなぁ)」

「ん? なんかいったかい?」

「いえいえ、なんでも! あっ、そういえば、今の話で、『辞書に載ってるか載ってないか』ってあったじゃないですか」

「うん、あったね」

「思ったんですけど、辞書ってひとくちにいっても、何種類もありますよ! ある辞書には、○○という言葉が載っているけど、別の辞書には載ってない、なんてのもあるんじゃないんですか?」


 おっと、鋭いところをついてくるね。
 あまり知られてないと思うんだけど、国語辞書には、それぞれ「カラー」があって、収録する言葉や解説に対しての方針のようなものがあるんだよね。

 そうした特色のある辞書は、いわゆる「小型辞書」に多いね。
 例えば『三省堂国語辞典』は、新しい言葉を積極的に取り入れるところに特徴があるし、類語の類は『現代国語例題辞典』が詳しいんだ。
 人気の高い『新明解国語辞典』は、言葉の解説に世相や社会風刺の面が強く出たりもしていて、こういうのは比較してみると本当に面白いよ。


「国語辞書っていっても、色々種類があるんですねぇ……」

「うん、そういうカラーの違いを楽しむ辞書マニア、日本語マニアみたいな人もなかにはいるんだろうね。けど、大事なのは、ちょっとでも言葉の使い方に迷ったら辞書をひいたほうが無難、ってことであって、辞書の種類はその次の問題だよ」

「なるほど。ちなみに道玄斎さんが使っている辞書は?」

「俺は『広辞林』かな」

「え? 『広辞苑』じゃなくて?」

「うん『広辞林』」

「聞いたことないなぁ……。なにかそれを使う理由が?」

「いや……家に昔からあったから……。『広辞林』は、今は『大辞林』って名前を変えてパワーアップしてるんだけどね」

「あれ? 『大辞林』は聞いたことあるなぁ。確か大きい辞書ですよね」

「そうだよ。中型の辞書ってとこかな。収録語数が20万語くらいが中型で、それ以上が大型だよ。さっき話した小型の辞書は7?8万語ってとこだね」

「さっき、したり顔で説明していた『新明解国語辞典』とかは持ってるんです?」

「いや……ちょっと懐に余裕がなくて全然持ってないんだ……」

「…………」



 というわけで、今回のお話はこれでおしまいだよ。
 そうだ。「日本語の許容」についての問題を置き去りにしてしまったから、ちょっと補足しておこうかな。

 ある言葉の意味を許容するかどうか、ってことなんだけど、私はそれも時代の流れの一つだから、言葉やその意味が変わっていくのは仕方ないな、って思っているんだ。

 例えば、「悪」って言葉があるよね。
 今では、これは英語でいうところの「Bad」という意味でしか使わないけれども、昔は「激しい」」という意味でも使ったりしたんだよ。

 そうやって、時代に合わせて言葉の意味は変化していくから、例えば、「敷居が高い」という言葉が「ハードルが高い」の意味になっていってしまうのも、また仕方ないことなのかな、と思ったりもするんだ。

 けど、それは大きな「言葉の変遷」というものであって、私個人のレベルでは、なるべく抗いたいとも思っているんだ。
 それはつまり、若者たちと、オッサンたちの言葉をめぐってのバトルだよ。
 だから、私はもし、誤用があったら、そこはちょっと指摘していきたいな、って考えているんだ。

(つづく)




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