道玄斎さんのコラム 41:道玄斎のノベルゲーム漫遊記
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●第四十一回「クラウドファンディングの未来を探る」
新年、あけましておめでとうございます。
舊年中は、大変お世話になりました。
本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。
というわけで、2016年だよ。
新年1発目のコラムということで、なにを書こうか、ちょっと考えたんだけど、2015年から続いている流れについて書いてみようかな。
それは「クラウドファンディング」というものなんだ。
考えかたはすでに何年も前からあって、実施されてきているものなんだけど、去年あたりからノベルゲームの界隈でも、ちらほら話題になってきているんだよ。
■まずは基本的なとこから
このクラウドファンディングはどういうものか、簡単にいうと、
・ウェブ上で活動の資金を集めることが出来る
というものなんだ。
例えば、私がノベルゲームを作りたい! と思ったけど、資金がなくて開発が出来ない。そんな状況にあるとしようか。
ノベルゲームの場合だったら、「絵師」さん、「音屋」さんへの謝礼というのが一番金額的にかさむかな? あと、ムービーの製作費だったり、完成品をイベントで頒布するなら「メディア代」なんかもかかるよね。
そういう「必要なお金」を集めるために、自分の「計画」を明らかにして、広く資金を募るんだ。
細かくわけると「購入型」、「投資型」なんてスタイルの違いはあれど、本質は変わらない。とにもかくにも、自分(たち)の立ち上げたプロジェクトの資金を集めるのがその目的なんだ。
以前だったら「銀行」にお金を貸してもらう、という選択肢くらいしかなかったんだけど、それには信用が必要だし、個人でやっている同人活動なんかに銀行はお金を貸してはくれないんだ。
けど、このクラウドファンディングは、「個人」から支援を受け取ることが出来るから、魅力的なアイデアがあって、多くの人が「それが実現して欲しいなぁ」と思えば、資金が集まり、計画を実行できるってわけ。
ただ、多くの場合、「目標金額が集まらない場合は、全額投資者に返金」という形をとっているところが多くて、多くの人に支持してもらえなければ(単発でガツンと投資してくれる人がいれば別だけども)、その計画はおじゃんになってしまう。
ちなみに、クラウドファンディングを行うにあたって、当然そのサービスを提供している会社に登録しないといけないわけなんだけど、断られてしまうケースだってもちろんあるし、目標金額が集まったら、手数料だってとられるってことは忘れちゃいけないんだ。
ま、このくらいわかっていれば十分かな。
■クラウドファンディングのメリット
つまり、クラウドファンディングを使えば、「自分がいいと思った計画にピンポイント」で応援が出来る。
さらに、「一口あたりの価格が低い(ことが多いし、任意の額でいい場合もある)」から気軽に投資が可能。
と、かなりのメリットがあるんだよ。
ニッチな計画であっても、ニッチであるがゆえに強烈なファンがいたりすれば、資金が集まる公算だって高い。
今まで、あまり日の目をみなかった分野やジャンルで「作品を発表」したりすることが容易になった、と言い換えてもいいかな。
そうそう。
これもクラウドファンディングにはつきものなんだけど、「投資してくれた人に、その投資額に比例したお返し」がもらえることもよくあるんだ。
例えば、エロゲーを作りたいってことで、投資を募る。
で、5000円以上投資してくれた人にはテレカを、10000円以上投資してくれた人には「抱き枕カバー」を特典として、みたいなね。
だから、投資した人も「計画が遂行される」以上のリターンがあるんだよ。
ひとくちにクラウンドファンディングっていっても、実はこういう部分で微妙に違いがあったりするんだ。
ともあれ、これだけならメリットばかりに思えるかもしれないね。
けど、私にはどうも、これからこのクラウドファンディングがらみでの問題も起こってきそうな気がしているんだよ。
■今度は逆に問題点
目標金額を達成しなければ、お金が返ってくるシステムのものなら問題はそんなに起こらないと思うんだ。だって、投資者の立場からすれば、少なくとも金銭的な意味での損はないからね。
一方で、「目標金額を達成しなくても、お金が計画者に入るもの」に関しては、ちょいと考える必要がありそうだよ。
というのも、集まったお金で提示した「計画」を実行する、とは限らないんだよ。
なにしろ「計画の資金集め」そのものには、失敗してしまったわけだけど、その一部は手元にある。
「この計画を実行するには20万円必要」だったはずが、ふたを開けてみれば、10万円しか集まらなかった。
となると、当然、予定していた計画は進行出来ないよね。少なくとも完成はしないことになる。
じゃあ、その10万はどうなるんだい?
いつか来るべき日に備えて、自分の設備を充実させたりするんじゃないかな? 絵を描く人だったら、新しいペイントソフトを買ったり、あるいはペンタブを買ったり、もしかしたら、作画資料集のようなものを買うのかもしれないね。
けど、そこまで来ちゃうと、それはその「計画」からちょいと外れたお金の使いかただって気がしてこないかい?
資金集めに失敗しているわけだから、「完成を確約」する必要もないわけで、その10万円の使い道はなんとなく不透明なままなんだ。
そういうリスク(?)も込みで、「それでもこの人を応援したい!」ってことならもちろん話は別だし、それはそれでいいんだ。
けれども、そうじゃない人、投資したお金でその「計画」を進め、遂行して欲しいと思ってた人からすれば、なんとなく不満は残るんじゃないかな。
■カンパ型クラウドファンディング
ところで、「カンパ」に近い形でのクラウドファンディングもあるんだよ。
つまり、「○○が欲しいから、カンパしてよ!」というタイプのヤツ。
「○○をしたいからカンパしてくれ」という、「計画」というよりは、欲しい「モノ」が最初にあって、それに対して資金の援助をお願いするものが多いみたいだね。
これは、私が実際見たことのあるもので、不思議なケースがあったんだ。
どういうケースかっていうと、「イラストレーター」さんが募集をかけたものなんだけど、「カンパ対象」はなんと一個90円の消しゴム。
その人は、人脈が広いから、あっという間に目標金額の90円を達成してしまったんだ。
さらに、集まったお金は90円を大きく超えて、1000円、2000円……と膨らんでいったんだよ。もちろん、期間内に集まったお金は、資金としてイラストレーターさんがもらえるんだ。
これはどう思う?
私の邪推もあるんだけど、そのイラストレーターさんは「消しゴム」なんて欲しくはなかったんじゃないかなぁ?
だって、1個90円の消しゴムだよ。
アナログも使うイラストレーターさんにしたら、消しゴムがないなんてことは考えられないだろうし、ご存じの通り、消しゴムはいつでもどこでも買えるようなものなんだよ。
つまり、「消しゴム」っていうのは、いわば「口実」みたいなもので、実際は消しゴム代の90円を超えて入ってくる余剰金が目当てだったんじゃないかな、って思えてしまうんだ。
あるいは、「クラウドファンディングのお試し的な利用」としてとりあえず、消しゴムを設定してみた、って可能性もあるかな。
けど、目標金額を大幅に上回っているのにも関わらず、その「消しゴム代の資金集め」はまだ継続しているんだよ。これは、やっぱり……ちょっと疑っちゃうよね。
この手のクラウドファンディングやカンパ型の資金集めのサイトを見ていると、やはり問題のある募集が時たまあらわれるみたいなんだよ。
たとえば、「世界中の子供の写真を撮って写真集を作りたい」なんて計画を立てて資金を集めている人がいたとしようか。実際、これに近い形での計画はかなりあるんだけどもね。
で、その企画には、何にいくらかかるのか、っていう「予算表」もくっついているんだけど、「渡航費」や「ワクチン接種代」なんて比較的理解しやすいものがある一方で、なんと「カメラ代」も計上されていたりするんだ!
「世界中の子供の写真を撮って写真集を作る」っていう段階で、すでにカメラを持っていて、けっこう写真とか撮っている人なんじゃないかな? って思っちゃうんだけど、どうやらそうでないケースっていうのもあるんだよね。
■見極めが大事
こういう問題があることはあるんだけど、忘れちゃいけない大前提っていうのもあるんだ。それは、「そうした形での募集をクラウドファンディングのサイトは別に禁じてはいない」ってこと。
つまり、規約、システム的には「問題がない」ってことだよ。
だけど、それは制度として問題がないってだけであって、人間の感情的な部分ではひっかかりを覚える人がいて、そこが一番の問題なんだ。
だから、「消しゴム一個」に対して資金を募って、集まったお金が目標金額を大幅に超えていても、その「消しゴム代」という名目で、自分が満足するまで資金を集め続けることだって(規約が許せば)出来る。
あるいは写真集を作る際のカメラのように、「明らかにそれは持ってないとダメだろ!」ってものを含めた形での、資金援助を募集することだって出来るんだ。
私が「問題が起こるんじゃない?」っていっているのは、こういう人間の感情的な部分でのことなんだ。
だから、資金援助をする人は相手の計画をしっかりと見極めないといけないし、資金援助を頼むほうも、なるべく多くの人に納得してもらえるような形にしないと思わぬ問題が起こりそうなんだよ。
最近では「クリエーターそのものを支えるためのクラウドファンディング」みたいのも出来てきているようで、それはそれでいいと思うんだ。
けど、「計画」に対して資金を募るもの、「あるモノを購入するためのカンパ的資金集め」に関しては、資金を集めるほうも、資金を出すほうも少し慎重になって考えたほうがよさそうだね。
「消しゴム代」を名目で資金を集めたなら、消しゴムが買える金額が集まった段階で、とりあえず「その資金援助募集」は終了にする。
余剰金額があれば、その使い道を明記する(別のクラウドファンディングにそれを投資する、なんてのはいいアイデアかもしれないね)。
目標金額を達成しなくても、集まった資金がもらえるものは、やはりその使い道をキチンと支援者に知らせる。
写真集を作るなら、カメラくらいは最低持ってろ。
こうした点を、資金援助者はチェックして、資金を出すに値するかどうか、また資金が正しく使われるかどうかを見極める必要があるってことかな。
■まとめ
ともあれ、クラウドファンディングっていうのがなかなか画期的な資金集めの方法だっていうのも間違いはなくて、優れた作品がそれによって生み出されているんだ。
私もクラウドファンディングによって資金を集め、制作されたコミックを買ったこともあるんだ。
私自身はそこまで問題は感じなかったんだけど、色々問題があって連載が取り消しになってしまった作品だよ。
そういう作品がクラウドファンディングによって出版され、愛読者がそれを手に取ることが出来るってのはいいもんだよね。
ノベルゲームだって、こうしたクラウドファンディングを上手く使えば、面白い企画を形に出来るだろうし、納得のいくものが作れるかもしれない(もちろん、資金が集まれば、だけどね)。
シェア作品に関しても、「何とか売って、製作費くらいは回収したい」みたいな部分がなくなれば(あるいは減少すれば)、もっと自由に「作りたいもの」に向きあえるかもしれないよね。
たぶん、2016年はもっとクラウドファンディングが一般的になってくるだろうし、前述の通り、問題も起きたりすると思う。
先にあげたもの以外だったら、結局「クラウドファンディング」ウケのする計画ばかりが資金を集めることが出来、本来、対象であるべき「ニッチ」な傾向を持った計画にはなかなか資金が集まらない、とかね。
けど、悪い予想はキリがないし、そこで過度に悲観的になる必要もないよね。
むしろ、「どうなるかわからない」っていう部分を前向きにとらえて、今後クラウドファンディングによってノベルゲームの世界がどう変わるのか、1つの楽しみにしてみようよ。
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(つづく)
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