道玄斎さんのコラム 23「急募！　制作チーム。当方ディレクター」

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●第二十三回「急募！　制作チーム。当方ディレクター」

　今回は、予告どおり「ディレクター」についてのお話だよ。
　この無料ゲーム.comさんのサイトには、たくさんの制作者さんのコラムがあって、そこに、少なからず「ディレクター」についての言及はあるんだ。

　「館山さん」のコラム なんかだと、ディレクターの重要性がこれでもか！　というくらい強調されているんだけれども、これは本当に大事な役職なんだ。
　そのディレクション次第で、制作がスムーズにいくかどうか、もっと言ってしまえば、完成するかしないか、が分かれてしまうんだよ。

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■ここでおさらい３要素

　ちょっと前に、このコラムで「ノベルゲームの３要素」っていうのを書いたんだけど、覚えているかな？　そう、「シナリオ」「イラスト関係」「音関係」の３つだよ。

　それぞれに対応する役職っていうのもあったよね。シナリオならばライター、イラスト関係ならば絵師さん、音関係は音屋さんというように、非常にわかりやすい対応関係があるんだ。

　あれ？　じゃあディレクターは？
　そんな疑問の声が聞こえてきそうだから、答えから先に言ってしまおう。「多くの場合、ライターが兼任する」んだ。複数のライターがいた場合は、やっぱりメインライター（この人が企画主であることが多い）がその役につくんだよ。

　ゲームの……特に同人ゲームの分野だと、「ディレクター専任」って人はまずいないね。
けど、それも考えてみれば当たり前なんだ。完成させようとしている作品について、熟知してないとディレクションなんて出来るわけないじゃないか。
　だから、「完成形が見えている人」がディレクターになるってわけ。

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■ヘンテコなケースだってあるぞ

　と、基本的に「完成形が見えている人」がディレクターになる、ってことなんだけど、ヘンテコなケースもあるんだよ。

　例によって例の如く、ノベルゲームを作ろうとした人がいたと思いねぇ。
　その人は、いわゆる「ノベルゲームの愛好家」で、まだ自分では作品を作ってはいなかったんだけど、色々な作品をプレイしていて審美眼があったんだよ。

　ゲームをプレイしていると、自分でも作りたくなるのが人の常。
　その人も、案の定、自分でゲームを制作するってことを考え始めたんだ。

　けど、へたに審美眼を持っていたのがよくなかったんだろうねぇ……。シナリオのネタこそないんだけれども、頭のなかでは「自分の描く理想のゲーム」がぼんやりと存在していて、それはやっぱり、かなりのハイクオリティなものだったというわけ。

　さっき、おさらいしたけど、ノベルゲームの３要素に対応する役職がゲーム制作には必要だ。そこで彼女は考えた。


「イラスト……は描けないから誰かに頼めばいっか。音楽……も作れないから素材を借りようかなぁ……いやいや、理想のゲームを作るには、やっぱりオリジナルの音楽じゃないと！」


　と、まぁ、こんな風に考えていったんだよ。
　結果、どうなったか、って？　うん、そこが問題なんだよ……。彼女が出したスタッフ募集の掲示は……


　　　☆ノベルゲームスタッフ大募集☆

　　　このたび、オリジナルノベルゲームを作るため、お手伝いして頂ける
　　　スタッフのかたを募集しています！

　　　【募集職種】

　　　○ライターさん（１?２名）

　　　　私が指示するシナリオを書いて頂きます。


　　　○絵師さん（１名）

　　　　作品のイラスト（一枚絵・スチル）を描いて頂きます。


　　　○音楽制作さん（１?２名）

　　　　オリジナルのＢＧＭやテーマ曲を作って頂きます。


　　　○スクリプターさん（１名）

　　　　スクリプトや演出をお願いします。


　　　奮ってご参加ください！　ご連絡お待ちしています！！


　……と、まぁ、こんな塩梅だったんだ。
　こういう募集広告がどうマズいのか、色んなかたがコラムで書いているから、ここではくりかえさないよ。

　けど、なにより問題なのは、「彼女本人はなにをやるんだ？」ってとこなんだ。
　ライターさん、絵師さん、音屋さん、さらにスクリプターさんまで募集をしているわけで……。

　そうなんだ。
　彼女は、ディレクターという役割だったんだ。

　彼女は物語（ストーリー）の大枠（たぶん、ぼんやりしたものだと思う）をなんとかしてひねりだし、それをライターさんに渡して、シナリオを書いてもらう。同時に、そのシナリオにマッチするようなデザインや音楽、イラストを作ってもらおうと考えていたんだろうね。

　けど、けどだよ？
　企画者が制作にほとんどノータッチっていうのも、ちょいと異常じゃないかい？
　たしかに、商業作品のなかには、社長さんが「ディレクター」として名前だけクレジットされている、なんてケースはあるよ。
　だけれども、今回はいわゆる同人ゲームだし、ディレクターであるところの彼女の力量っていうのも未知数なんだ。

　ディレクションっていうのは、さっきも書いたんだけれども、ゲーム制作の流れをわかっている人、そして、作ろうとしているゲームの完成形を理解している人がなるものなんだよ。

　ところが、彼女の場合、ゲーム制作の経験自体がなかったんだ。
　だから、おそらくメンバーが集まって作業をしていても、いきあたりばったりの指示しか出せないだろうし、「出来ること」「出来ないこと」がわからないから、メンバーに無茶をさせてしまうと思うんだ。

　なので、多くの人がいっているように、「とりあえず、自分だけで１本ゲームを作ってみる」っていうのは、どういう役をやるにせよ、とっても大事なことなんだ。
　なにも「超長編スペクタクルロマン！」なんてものを作らなくても（もちろん、作ってもいいよ！）、短い作品でも十分だよ。

　そういう「自作の経験」によって、自分が出来ること／出来ないこと、得意なこと／苦手なこと、あるいは、どこをしっかりと作り込むと、自分の理想の作品に近づくのか、とか、どこを頑張ると全体のクオリティがあがるのか、みたいなツボが体感出来る。
　すると、メンバー集めのときだって、もっと具体的な募集がかけられるし、メンバーへの指示もスムーズになるってわけ。それに、自分でゲームを作るとなると、必然的にディレクターも自分でやらないといけないしね。

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■ディレクターは上級職

　簡単にいってしまえば、ディレクターっていうのは、「上級職」なんだよ。
　ライターでも、イラストレーターでもなんでもいいんだけど、ゲーム制作に関わるジョブを一定以上経験して、しかるのちにクラスチェンジしてなるものなんだ。

　……といっても、自作ゲームを作るっていうのは、ハードルが高いのも事実だね。つまり経験値をなかなか簡単にためられないってことなんだ。
　ガンガン色々なことにチャレンジして、ドンドン作品を生み出していくような人っているけれども、そういう人は例外だろうね。

　けど、経験値をためる穴場がＲＰＧにあるように、ノベルゲーム制作においても、それに近い場っていうのもあるんだ。
　それはズバリ、「デバッガー」なんだよ。

　デバッガーを経験すれば、ゲーム制作の流れがなんとなく見えてくるし、デバッグによって発見されたバグを修正する制作者の手腕も見られる。
　ほかにも、「こういうところでバグが出やすい」とか、大づかみではあるけれども、ゲーム制作を一望出来るんだ。

　誤字脱字を修正する雑用係、なんてイメージがデバッガーにはあるけど、しっかりと作業をすれば制作者さんに喜ばれるし、いざ自分の作品を作ろうってときにも、そこで知り合った人に協力してもらえることだってある。意外とデバッガーっていうのもあなどれないものなんだよ。


　結局、ゲームを作りたいと思うなら、「なにかしら自分でやってみる」ってことじゃないかな。
　一番理想的なのは、やはり自作ゲームを作ることだけれども、デバッガーだっていいし、場合によってはウェブサイトの管理とかをやってもいいんじゃない？　メンバーとして企画にもぐり込んでしまえば、やっぱりゲーム作りについて、色々有益な示唆があるもんだよ。

　そうして、経験をつんだら、作りたいものを見すえ、人を集めてそのときはじめてディレクターになって、オリジナルの素晴らしい作品を生み出せばいいんだ！

（つづく）

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